「うちは不動産で節税してるから、もう十分ですよ」
そう笑っていた社長が、半年後に私のところへ相談に来ました。年商10億の建設会社を30年かけて育ててきた、59歳の創業社長です。ちょうど「そろそろ後継者に譲ることも考えないと」と意識し始めた時期でした。
「もっと大きな節税の手があったって、今さら知って…」
その「大きな手」を今日はランキング形式でお伝えします。社長が活用できる投資型節税の序列を整理すると、1位の答えが多くの方の常識を覆します。
3位:不動産節税 ―― 定番だが、出口に罠がある
不動産投資は節税の王道として長く語られてきました。法人で物件を購入し、年500万円の減価償却費を計上すれば、実効税率約30%として年間150万円の節税効果が得られます。
ただし、見落としがちな落とし穴があります。
減価償却で帳簿価値が下がった物件を将来売却するとき、売却益が課税対象になります。減らした分だけ後から取り返される構造なので、純粋な節税というより「課税の繰り延べ」に近い面があります。長期保有を前提に、出口戦略まで設計できる方には有効ですが、「とりあえず不動産で節税」という感覚だけで動くのは少し危険です。
2位:法人保険 ―― 使い勝手は落ちたが、まだ選択肢
役員の退職金積立と法人税圧縮を同時に狙える法人保険は、長年にわたって中小企業オーナーに愛用されてきました。かつては保険料の全額を損金算入できるスキームも存在していました。
しかし2019年の通達改正以降、節税効果は大幅に縮小しています。損金算入できる割合が制限され、かつてほどの「節税の切り札」ではなくなりました。退職金積立の手段として割り切れば活用価値はありますが、節税目的だけで選ぶのはおすすめできません。
1位:役員退職金設計 ―― ROI300%超えの衝撃
さて、1位です。「退職金って、そんなに大きい話なの?」と思う方もいるかもしれません。数字を見てください。
月額報酬100万円の社長が30年間会社を経営し、功績倍率3倍で退職金を設計すると、退職金の目安は9,000万円になります。
この退職金は法人側では損金(経費)として計上できるため、法人税の節税効果があります。さらに個人側では「退職所得控除」という強力な優遇税制が使えます。勤続30年なら1,500万円の控除に加え、残りの金額も「2分の1課税」の特例が適用されます。給与所得と比べると、税負担が圧倒的に軽くなるのです。
法人の節税と個人の優遇課税を組み合わせると、節税効果が5,000万円規模に達することもあります。ROIに換算すると300%を超えるケースも珍しくありません。
一点補足しておきます。功績倍率3倍は法律で定められた上限ではなく、税務上の目安として用いられる数字です。業種・規模・在任期間によって合理的な倍率は変わりますし、税務調査でも論点になりやすいポイントです。設計時は必ず税理士と一緒に検討してください。
今からでも十分間に合う理由
役員退職金の最大の特徴は、今から設計を始めることで節税効果が積み上がる点です。
不動産や保険は購入した瞬間から効果が出ますが、退職金は「退職時に一括で威力を発揮する」仕組みです。つまり、現役のうちに報酬体系と退職金規程を整備しておくほど、将来の節税規模が大きくなります。
50代の社長であれば、あと10〜15年で数千万円規模の節税機会を設計できます。まだ退職金規程を整備していないなら、不動産を買う前に、まずこちらを税理士と相談してみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。