「退職金なんて、どうせ大した差は出ないでしょ」\n\nそう思っている社長さん、実は多いんです。でも先日、ある経営者仲間の話を聞いて、その認識が一気に変わった方がいました。同じ規模の会社を同じ年数経営してきた二人が、引退時に受け取る退職金で1億円以上の差がついていた、というんです。\n\n業種も似ている。役員報酬も同じくらい。なのに、なぜここまで差が出たのか。\n\n## 「設計した人」と「しなかった人」の分岐点\n\n月200万円の役員報酬で30年間会社を経営してきた、二人の社長を思い浮かべてください。同じ業界で、規模感もほぼ同じ。65歳になったのを機に、二人そろって引退を決めました。\n\n一方の社長は、10年前から退職金規程をきちんと整備していました。もう一方の社長は「そのうちやろう」と思いながら、気づけば引退直前まで規程が未整備のままでした。\n\nこの違いが、最終的にどんな数字を生んだか。\n\n退職金規程を整備した社長は、功績倍率3.0で退職金を計算。受け取り額は約1億8,000万円でした。一方、規程なしで功績倍率1.0のままだった社長は約6,000万円で着地。差額は1億2,000万円、退職所得控除後の実質的な手取りベースで比べると、その差は約9,000万円にもなります。\n\n同じだけ会社を育ててきたのに、受け取る金額がこれほど違う。これが「設計した人」と「しなかった人」の現実です。\n\n## 功績倍率3.0はどこから来るのか\n\n「功績倍率3.0って、そんなに高くして大丈夫なの?」という疑問が出てくるかもしれません。\n\n役員退職金の計算式は、一般的にこう表されます。\n\n\n役員退職金 = 最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率\n\n\n功績倍率は会社への貢献度を数値化したものです。法律で「3.0まで」と定められているわけではありませんが、税務実務の世界では3.0が否認されにくい目安値として定着しています。過去の判例や税務調査の蓄積から、おおむねこのあたりまでであれば認められやすい、という経験則です。\n\n逆に言えば、規程がない状態や、根拠のない高額退職金は「過大役員退職金」として損金算入を否認されるリスクがあります。きちんと整備された規程と、それを裏付ける社内記録の積み重ねがあってこそ、功績倍率3.0が税務上も通りやすくなるんです。\n\n## 「そのうちやろう」が一番危ない理由\n\n退職金設計でよくある失敗パターンが、「まだ先の話だから」と先送りし続けることです。\n\n退職金規程の整備は、実際に退職する5〜10年前が勝負と言われています。なぜかというと、規程を作って終わりではなく、その規程に基づいて毎期の株主総会議事録や役員報酬の支払い記録を積み重ねていく必要があるからです。\n\n引退直前に慌てて規程を作っても、「急に作った」と見られ、根拠として弱くなることがあります。何年もかけて記録を積み上げていることが、税務上の説得力につながります。\n\n## 退職金には「最後の節税チャンス」という側面もある\n\nもう一つ押さえておきたいのが、退職金には退職所得控除という非常に有利な税優遇があることです。\n\n在任年数20年を超えると控除額が大きく増え、給与として受け取るより圧倒的に税負担が軽くなります。役員報酬や配当で同額を受け取ろうとすると、所得税・住民税・社会保険料などがかさんで手取りが大きく目減りしますが、退職金はその点で別格の扱いを受けます。\n\n経営者にとって退職金は、会社を通じた最後の、そして最大規模の節税チャンスと言っても過言ではありません。\n\n## まず自社の規程を確認してみてください\n\nあなたの会社に退職金規程はありますか?あるとしたら、功績倍率はいくつに設定されていますか?最後に更新したのはいつですか?\n\n規程がなければ今期中に整備を始める。規程があっても内容が古ければ税理士と一緒に見直す。それだけで、引退時の手取り額が数千万円単位で変わってくることがあります。\n\n「引退はまだ先」と思っていても、準備は早ければ早いほど選択肢が広がります。まずは顧問税理士に「うちの退職金規程、最近見直しましたか?」と一言聞いてみることから始めてみてください。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。
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