先日、創業24年の製造業を経営する社長と話していたときのことです。「そろそろ引退も考えているので退職金を試算してみたら、想像よりずっと少なかった」と苦笑いしていました。

長年会社を守ってきたのに、いざ数字を出してみたら「こんなものか」と肩を落とす。実はこういう社長、珍しくありません。

一方で、同規模の会社でも退職金を億単位で受け取る社長もいます。その差はどこから生まれるのか。今回は、退職金が多い社長に共通する5つのポイントをお伝えします。

第5位:退職金規程をきちんと整備している

「そんな基本的なこと?」と思うかもしれません。でも、退職金規程を整備していない会社は本当に多いです。

規程がないと、支払う退職金の根拠が曖昧になり、税務調査で「不相当に高額」と指摘されるリスクが高まります。逆に言えば、規程さえ整備されていれば支給額の妥当性を示しやすくなり、損金算入の根拠が明確になります。「いつか作ろう」と後回しにしていると、本当に必要なタイミングで間に合わなくなります。

第4位:功績倍率を2〜3倍の適正水準に設定している

役員退職金の基本計算式はこうなっています。

退職金 = 最終月額報酬 × 勤続年数 × 功績倍率

この功績倍率、代表取締役であれば税務上3.0倍までが目安とされています。にもかかわらず、1.0倍のままにしている会社が少なくありません。功績倍率を3.0倍にするだけで、退職金の総額は3倍になります。設定を見直すだけで変わる話なので、早めに確認しておきたいポイントです。

第3位:早期に役員就任して勤続年数を積んでいる

計算式に「勤続年数」が含まれていることに注目してください。

最終月額報酬150万円・功績倍率3.0倍の社長を例にとると、勤続20年なら退職金は9,000万円、勤続30年なら1億3,500万円。たった10年の差が4,500万円の差を生みます。「取締役就任はもう少し後でいいか」と先延ばしにしていると、この差がどんどん広がっていきます。

第2位:最終月額報酬を数年かけて段階的に引き上げている

退職直前に月額報酬を急に大幅アップすると、税務調査で「退職金を増やすための操作では」と見られやすくなります。

退職金が多い社長は、退職の5〜10年前から毎年10〜20万円ずつ、自然な形で報酬を引き上げています。業績に連動した増額であれば説明もしやすく、最終月額報酬を高く設定することが正当化されます。焦って一気に上げるのではなく、計画的に積み重ねることが鉄則です。

第1位:10年前から出口を逆算して設計している

ここが最も大きな差を生む部分です。

退職所得には「退職所得控除」という非課税枠があります。勤続30年なら1,500万円、40年なら2,200万円が控除対象です。さらに、控除後の金額をさらに2分の1にして課税されるため、給与と比べて税負担が格段に軽くなります。

この仕組みを最大限に活かすには、企業型DCや生命保険を使った積立原資の確保と、退職所得控除の最大化を組み合わせた長期設計が必要です。5年前から動いた社長と10年前から設計した社長では、手取りの差が数千万円になることも珍しくありません。


5位〜4位はすでに対応済みでも、1位の長期設計まで落とし込めている社長は多くありません。退職を意識し始めた今が、設計を見直す最良のタイミングです。まず現状を専門家に診断してもらうところから始めてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。