先日、年商3億円の建設会社を経営する社長から、こんな相談を受けました。
「親父が先月亡くなって今は相続の手続き中なんですが……自社株の評価額が思っていた以上に高くて、正直ぞっとしています」
お話を聞いてみると、ここ数年で業績が伸び、内部留保がかなり積み上がっていたとのこと。それがそのまま株価に反映されて、相続税の試算額が想定の倍以上になっていました。
「3年前に何か手を打っておけば、ずいぶん違ったんでしょうね……」
この一言が、今回お伝えしたいことのすべてを表しています。
「動いた社長」と「動かなかった社長」を分けた3つの差
相続対策で後悔する経営者の多くは「もっと早く始めていれば」と口を揃えます。特に相続の3年前は、準備をするかどうかで結果が億単位で変わる重要な分岐点です。
影響の大きかった順に、三つの差をご紹介します。
第3位:遺言書がないまま、相続を迎えてしまった
「うちの兄弟は仲がいいから大丈夫」——そう言っていた社長の相談を、何度聞いたかわかりません。
ところが実際に相続が発生すると、自社株の帰属をめぐって子どもたちの意見が割れるケースがあります。誰が後継者なのか、株をどう分けるのか。これが決まらないと株主総会も開けず、銀行融資が止まりかねない事態になります。
一方、3年前に公正証書遺言を作っておいた社長は、後継者の名前と株の配分をすでに明記していました。相続が発生した翌朝から、後継者が粛々と経営を続けられた。遺言書一枚の差が、会社の命運を分けることがあります。
第2位:生前贈与を「いつかそのうち」で放置した
2024年1月から、見落とせないルール変更がありました。相続税の計算で、生前贈与が相続財産に持ち戻される「加算期間」が、それまでの3年から7年に延長されたのです。
3年前に贈与を始めていた社長は、旧ルールが適用されていた時期の贈与をすでに積み上げ済みです。年間110万円の暦年贈与をコツコツ続けていれば、それだけで数百万円単位の節税になります。
今から始めても無意味ではありません。ただ、贈与を始めてから7年間は相続財産に戻るという前提で計画を立て直す必要があります。「もう少し待ってから」が、実は一番もったいない選択です。
第1位:自社株の評価対策を、何もしていなかった
金額的なインパクトで言えば、これが最も大きい問題です。
会社の業績が好調で内部留保が積み上がると、それがそのまま自社株の評価額に跳ね返ります。非上場株式は「純資産価額方式」などで計算されますが、利益が増えるほど株価も上がり、相続税も膨らむ仕組みになっています。
3年前から対策を始めていた社長は、退職金準備や法人・個人の資産の組み替えなど、複数の手段を組み合わせて株価を適切にコントロールできていました。具体的な方法は会社の規模や状況によって大きく異なるため詳細は省きますが、重要なのは「利益が出ているうちに早めに動く」という発想です。株価が上がりきってから対策しようとしても、打てる手はかなり限られてしまいます。
「今日」がもっとも早い
生前贈与の加算期間が7年に延びた今、相続対策はより長いスパンで考える必要があります。それでも「3年前」は依然として重要な節目です。遺言書の整備、生前贈与のスタート、自社株評価のコントロール——この三つを着手しているかどうかで、相続税の総額は数千万円から億単位で変わってきます。
「うちはまだ先の話」と感じているなら、それは今がベストタイミングのサインかもしれません。対策に早すぎることはありませんが、遅すぎることは確実にあります。
まだ何も手をつけていないなら、まず顧問税理士に「相続対策の相談をしたい」と一本連絡を入れてみてください。そこから始まる対話が、会社と家族を守る第一歩になります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。