先日、「10年前の決断がようやく実を結びました」という社長に会いました。

年商3億の建設業を営む60代の方で、10年前に担当税理士から「法人名義でアパートを1棟買いませんか」と提案されたそうです。当時は「不動産は本業じゃないし、面倒くさそう」と半信半疑だったとか。

でも今は、「あのとき動いて本当によかった」と笑って話してくれました。その社長が退職時に手にした金額は、合計1.5億円。普通に役員報酬を積み上げていたら、まず届かなかった数字です。

法人アパートが「もうひとつの貯金箱」になる理由

建設業は利益が出やすい反面、法人税の負担も重くなりがちです。毎期コンスタントに黒字を出しているなら、そのお金をどう社内に残すか、が節税の本質になります。

そこで機能するのが、法人名義での不動産購入です。物件を法人で取得すると、家賃収入が法人口座に積み上がります。そして建物部分は、減価償却費として毎年経費に計上できる。

実際にはお金が出ていかないのに、帳簿上は「費用」として処理できる。これが不動産活用の最大の妙味です。

この社長の場合、年間家賃収入は約500万円。減価償却費の計上によって、法人税を毎年80万円前後圧縮できていました。本業の利益を守りながら、法人の内部留保を着実に育てていったわけです。

10年で積み上がった5,000万円と含み益

10年間、家賃収入を法人に蓄積しながら節税効果を積み重ねた結果、税引き後のキャッシュは5,000万円を超えていました。

さらに、不動産の価値も購入当初より上昇し、含み益が1,000万円近くに育っていたとのこと。

単なる節税で終わらず、法人の財務体力そのものを高め続けた。それがこの戦略の核心です。本業に集中しながら、法人の中に「第二の財布」を育てていく感覚と言えばわかりやすいでしょうか。

退職金1.5億円の設計はこうなっている

会社を退職する際に社長が受け取る退職金には、「退職所得控除」という手厚い優遇制度があります。

勤続20年超の場合、控除額は「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」で計算されます。この社長は勤続30年でしたから、控除額だけで1,500万円超。加えて、残った金額の2分の1しか課税されないという二重の優遇が効いてきます。

さらに役員退職金には「功績倍率」という考え方があります。最終月額報酬×勤続年数×功績倍率(3倍以内が目安)という計算式で適正額が導き出されます。

10年かけて法人に積み上げたキャッシュが原資となり、この計算式に乗せることで、退職金1.5億円という数字が現実になりました。不動産収入による内部留保と、退職所得控除と功績倍率の掛け算。この三つが揃ったときに、初めて実現できる設計です。

「今から始めても遅くない」は本当か

この戦略、仕込みには時間がかかります。理想は退職の10年以上前から動き出すことです。

50代の社長なら、今から1棟取得しておくと、65歳前後の退職時に絶妙なタイミングで効いてきます。退職所得控除は勤続年数が長いほど有利になる仕組みなので、先に動いた人ほど大きく差がつきます。

すでに60代に入っているなら、退職時期を少し後ろにずらしながら設計を最適化するアプローチもあります。大切なのは「そのうち考えよう」を卒業し、今期の決算が終わったタイミングで一度、税理士に「法人での不動産活用」を相談の俎上に乗せてみることです。

準備を始めた瞬間から、差はつき始めています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。