先日、創業28年の精密部品メーカーを経営している社長から、こんな相談を受けました。

「税理士に自社株の評価額を試算してもらったら10億を超えていた。自分が死んだら、息子に会社を継がせるだけで相続税が3〜4億かかると言われた。会社を売れというのか、と言いたくなった」

気持ちは痛いほどわかります。一生かけて育てた会社が、相続税のせいで後継者の重荷になる。こんな理不尽な話はないように感じますよね。

ただ、実はこの問題、手を打てるタイミングと方法があります。今回は、自社株評価を合法的に引き下げる3つの手法を、ランキング形式でお伝えします。


第3位:役員退職金を計上する

社長が退職するタイミングで、役員退職金を適正額で支給する方法です。

たとえば退職金を1億円支給すると、会社の純資産がそのぶん減ります。純資産が下がれば、自社株の評価額も連動して下がる仕組みです。

「退職金を払えば株価が下がる」と聞くと単純に聞こえますが、ポイントは「いくらまでが適正か」という金額の設定です。功績倍率や最終報酬月額をもとに計算した範囲内に収めないと、税務調査で否認される恐れがあります。退職金は経費になる一方で、受け取った社長側には退職所得税がかかりますが、退職所得控除が手厚いため、通常の役員報酬より税負担は軽くなります。


第2位:利益と純資産を計画的に圧縮する

中小企業の自社株評価には「類似業種比準価額方式」という計算式がよく使われます。この計算式は、利益・配当・純資産の3つの要素で決まります。

つまり、この3要素を合法的に下げれば、評価額も下がるわけです。

具体的には、設備投資を前倒しで行って利益を圧縮する、役員報酬を適正額に引き上げて純資産の積み上がりを抑えるといった方法があります。「節税しすぎると銀行融資に影響が出る」という心配もありますが、バランスを取りながら数年かけて計画的に進めることで、評価額を30〜40%引き下げることも十分に可能です。

重要なのは、「単発の対策ではなく、3〜5年の時間軸で設計する」ことです。


第1位:持株会社(HD)の設立

3つの手法のなかで、最もインパクトが大きいのが持株会社(ホールディングス)の活用です。

仕組みをざっくり説明すると、今の会社の株を社長が直接持つのではなく、新たに設立した持株会社が保有する形に切り替えます。すると、社長が保有するのは「持株会社の株」になり、その評価には別の計算ルールが適用されます。

この構造の組み替えにより、10億円あった自社株評価が3億円台まで圧縮できた、という事例は珍しくありません。相続税でいえば、課税対象が7億円減るわけですから、その効果は絶大です。

ただし、この手法は「順序」と「タイミング」が命です。持株会社の設立から株式移転、贈与・売買の組み合わせを間違えると、想定外の課税が発生したり、かえって評価が上がってしまうケースもあります。専門の税理士なしに自己流で進めることは、絶対に避けてください。


対策は「今の社長が元気なうち」に限られる

3つの手法に共通しているのは、「社長が現役で意思決定できる間にしか実行できない」という点です。

相続が発生してからでは、自社株評価を下げる手は打てません。評価額が確定したところで、後継者は重い税金と向き合うしかなくなります。

自社株の評価額が5,000万円を超えているなら、一度きちんと試算してもらうことをおすすめします。「うちはまだ先の話」と思っていた社長ほど、試算結果を見て顔色が変わります。

事業承継の準備は、早ければ早いほど選択肢が増えます。今期の決算が近いなら、まずは顧問税理士に「自社株評価の現状を教えてほしい」と一声かけることから始めてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。