先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。\n\n「税理士に”今の自社株評価だと、相続税だけで数億円かかる”と言われて、夜も眠れなくて…」\n\n年商10億円、創業30年の会社を一代で築いた60代の経営者です。業績は好調なのに、その「価値」が相続のときに牙をむく。これは決して他人事ではありません。\n\n実は、自社株の評価額は合法的に圧縮できます。しかも、知っているかどうかで結果が数千万円単位で変わる。今日はその代表的な3手法を順番にお伝えします。\n\n## 3位 類似業種比準方式の「数字の調整」\n\n上場企業の株価を参考にして非上場株を評価する「類似業種比準方式」。中会社・大会社に該当する会社はこれが使えます。\n\nこの方式では、配当・利益・純資産の3つの要素で株価が決まります。つまり、この3つを適切にコントロールすることが、評価額の圧縮につながります。\n\nたとえば、役員報酬を適正化して当期利益を抑える、配当を慎重に設定する。それだけで評価額が10〜20%下がるケースも珍しくありません。\n\n「利益が出ている会社ほど株価が高い」という当たり前の構造を、承継前に意識的に見直すのが第一歩です。\n\n## 2位 役員退職金による「二重圧縮」\n\n承継前に実行する社長が多い定番手法が、役員退職金の活用です。\n\n退職金を支払うと、まず純資産が直接減ります。さらに、その退職金は損金算入されるので当期利益も下がる。一石二鳥の「二重圧縮」が起きるわけです。\n\nただし、退職金の金額が過大だと税務署から否認されるリスクがあります。功績倍率法などを使い、業務実態・在籍年数・最終報酬月額に見合った金額を設定することが重要です。\n\n承継の2〜3年前から計画的に進める社長が多く、「知っていた社長」と「知らなかった社長」の間に数千万円単位の差が生まれることもあります。\n\n## 1位 持株会社化スキームで「50%以上の圧縮」も\n\n最も効果が大きく、かつ設計が複雑なのが持株会社化スキームです。\n\n事業会社の株式を持株会社に移すと、持株会社が保有する事業会社株の評価において「含み益への法人税等相当額控除」が適用されます。これが多段階で活用できるため、評価額が場合によっては50%以上圧縮できるのです。\n\nたとえば、時価30億円の事業会社を直接相続すると課税対象が30億円。しかし持株会社スキームを通すと、課税対象が15億円以下になるケースもあります。相続税の税率が高い層では、数億円単位の節税になります。\n\nただし、このスキームは構築のタイミング・契約設計・税務申告のすべてに専門知識が必要です。「聞いた話をそのままやった」では危険で、必ず信頼できる税理士とともに設計してください。\n\n## 「いつやるか」が、最も重要\n\n3つの手法に共通するのは、「早く動いた人が得をする」という事実です。\n\n承継の直前に慌てて手を打っても、税務上の問題が生じたり、評価への反映が間に合わなかったりします。特に持株会社化は設計から完成まで1〜2年かかることも珍しくありません。\n\n「自社株の評価がいくらか、まだ把握していない」という経営者は、まず税理士に現状の試算を依頼するところから始めてみてください。数字が見えると、対策の優先順位が自然と整理されます。\n\n承継のゴールは「会社を残すこと」だけでなく、「次の世代が安心してスタートを切れる状態にすること」です。その準備を、今期から少しずつ始めておきましょう。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。