先日、年商3億円の製造業の社長からこんな連絡が来ました。「税理士から申告書の確認依頼が来たけど、なんか税金が高い気がして……」

話を聞いてみると、3月末時点で計上できるはずの未払費用が、まるごと抜けていたんです。金額にして600万円以上。実効税率34%で計算すると、200万円以上が余分に税務署へ消えていくことになります。

これ、知らないまま申告すると本当にもったいない。

決算が締まったら、取り返しがつかない

3月決算の申告期限は5月末。この時期に見直しておきたいのが「未払費用の計上」です。

難しい話ではありません。3月31日時点で「すでに確定している費用」は、まだ実際に支払っていなくても今期の経費に入れることができます。

具体的には、こういったものが対象です。

  • 未払賞与:4月に支給する決定済みの賞与
  • 顧問料・士業報酬:3月分がまだ支払前の場合
  • 外注費・業務委託費:3月に納品済みで請求書が未着のもの

ポイントは「3月末時点で金額が確定していること」。交渉中だったり金額が曖昧なものは計上できませんが、確定しているのに入れ忘れているケースが意外と多いんです。

600万円の漏れが、200万円の損失になる

少し数字で整理してみましょう。

所得が800万円を超える中小法人の実効税率は、おおよそ34%前後です。法人税・地方税・事業税などをすべて含めた、実質的な負担率です。

この状況で600万円の経費計上漏れがあると、税負担は単純計算で約200万円増えます。

600万円 × 34% ≈ 204万円

200万円あれば、設備投資の頭金にもなりますし、社員の賞与に上乗せすることもできます。「なんとなく今期は税金が高いな」と感じているとき、こういった計上漏れが積み重なっていることが少なくありません。

申告後では「なかったこと」にできない

「更正の請求」という、払いすぎた税金を後から取り戻す手続きがあります。ただし、これは申告内容に明らかな誤りがあった場合に使える制度です。「計上できたはずの費用をうっかり忘れた」という理由では、原則として認められません。

申告書を出した時点で、その内容が確定します。「税理士に任せているから大丈夫」と思っていても、実態を一番知っているのは社長自身です。

今すぐ確認したい3つのポイント

申告前の最終チェックとして、以下を顧問税理士と一緒に確認してみてください。

1. 4月支給の賞与は金額が確定しているか 取締役会や社内決裁で金額が決まっていれば、今期の未払賞与として計上できます。議事録や承認記録など、根拠となるエビデンスを残しておくことが重要です。

2. 3月分の顧問料・外注費に未払いはないか 3月中に業務が完了しているが、請求書がまだ届いていないものも計上対象になります。「発生主義」の考え方で、サービスを受けた時点で費用が発生しているという考え方です。

3. 年払い・前払い費用の月割りは正しく処理されているか 保険料・リース料・家賃など、まとめて支払っているものは月割りで費用化されているか確認を。意外と見落としやすいポイントです。


申告期限の5月末まで、もう時間がありません。

毎年同じように申告していると、「去年もこうだったから」という感覚で見落としが続きます。今年こそ顧問税理士に「未払費用の計上漏れはないですか?」と、一言だけ確認してみてください。その一言が、200万円の差になることがあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。