先日、3月決算の製造業を経営されている社長から、決算の2ヶ月前にこんな連絡が来ました。「顧問税理士から『今期は利益が予想以上に出ています』と言われたんですが、何か手を打てますか?」
正直に言えば、決算日の2ヶ月前ならまだ間に合います。でも3月31日を1秒でも過ぎると、その期はもう「終わり」です。できることとできないことが、その瞬間に明確に分かれてしまいます。
今回は、3月決算の会社が決算前に使える3つの手法をご紹介します。実効税率34%の会社がこれらをうまく組み合わせれば、課税所得を880万円圧縮し、法人税を約300万円減らすことも理論上は可能です。
「支払い前でも経費になる」費用を見落としていませんか
まず確認してほしいのが、「3月末時点で発生しているのに、まだ支払っていない費用」です。
たとえば、3月中に使ったコンサルティング費用の請求書が4月に届くケース。「4月に払うから4月の経費」と思いがちですが、それは誤解です。費用が「発生した時点」、つまり3月の損金として計上できます。これが「未払費用の計上」です。
対象になりやすいのは、3月分の残業代(4月払い)、締め後の顧問料・外注費、地代家賃の翌月払い部分など。数十万円単位で見落としているケースが珍しくないので、決算前に経理担当者と一度洗い出してみてください。
「どうせ来期買うもの」を今期に動かす
次に使えるのが、少額減価償却資産の特例です。1点あたりの取得価額が30万円未満の備品であれば、通常の減価償却を待たず、購入した期に全額を経費として落とせます。青色申告法人であれば使える制度で、年間合計300万円が上限です。
パソコン・複合機・オフィス家具・カメラ機材など、「いずれ必要になるもの」を検討しているなら、3月末までに購入して引き渡しを受けることが重要です。4月1日に届いた備品は次期の経費になってしまいます。
「必要になったら買えばいい」ではなく、「どうせ来期買うものを今期に前倒しする」という視点が、決算前節税の基本的な考え方です。
役員賞与を「損金にできる形」に設計する
多くの社長が誤解しているのですが、役員賞与は原則として損金になりません。だから「賞与を出しても節税にならない」と最初から諦めている方がとても多い。
ところが「事前確定届出給与」という制度を使えば、役員賞与も損金算入できます。「いつ・いくら支払うか」を事前に税務署へ届け出ておけば、その金額の賞与が損金として認められる仕組みです。
一点、絶対に気をつけてほしいのが、届出した金額と実際の支払額が1円でもずれると、損金算入が認められないことです。手続きには株主総会や取締役会での決議も必要で、決算月が近い場合はスピードが命取りになります。今すぐ顧問税理士に「間に合いますか?」と確認してください。
3手法を組み合わせると、数字がこう変わる
先ほどの3手法を組み合わせたイメージを具体的に示すと、こうなります。
未払費用の計上で約180万円、少額減価償却で備品100万円の即時損金化、事前確定届出給与で役員賞与600万円の損金計上。合計で課税所得を880万円圧縮できれば、実効税率34%の会社では法人税が約300万円減少します。
「たった3つの手続きで、それだけの差が出るのか」と驚く社長は少なくありません。もちろん会社の状況によって効果は変わりますし、すべての手法が自社に使えるとは限りません。
「決算が終わってから相談」では手遅れになる
よくある失敗パターンが、決算が終わってから税理士に「もっと節税できませんでしたか?」と聞くケースです。
決算確定後にできることは、基本的に「申告書をどう書くか」だけです。課税所得を動かせるのは、3月31日までに実際に行動した内容だけ。その期の節税チャンスは、その期の終わりと同時に消えます。
今期まだ何もしていない、という方は今週中に顧問税理士へ連絡することをおすすめします。動ける時間は、残りわずかです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。