先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。「決算まであと1ヶ月しかないけど、まだ何か手はありますか?」——焦り気味の声でしたが、正直、1ヶ月あれば十分です。

結論からいうと、3月決算の会社でも、今この瞬間から動けばまだ5つの節税チャンスが残っています。今回は実際に使いやすい手法を、効果の高い順に紹介していきます。

まず押さえておきたい:数字の話

所得が800万円を超えている法人の実効税率は、約34%です。つまり100万円を経費化できれば、法人税の負担が34万円減る計算になります。

「たかが100万円」と思うかもしれませんが、決算前の動き次第で数百万円単位の差が生まれることも珍しくありません。利益が出ているなら、合法的な節税策を使わない理由はないはずです。

5位:短期前払費用で今期の損金を増やす

家賃や保険料などを1年分まとめて前払いすることで、その全額を今期の経費に計上できる制度です。たとえば月20万円のオフィス家賃を12ヶ月分、240万円まとめて3月中に支払えば、240万円が今期の損金になります。

注意点は「毎期継続すること」が条件という点です。「今年だけ前払いする」という使い方は認められません。翌年以降の資金繰りも踏まえた上で、顧問税理士と相談しながら判断してください。

4位:30万円未満の備品を今すぐ購入する

中小企業者等に認められた少額減価償却の特例制度です。30万円未満の備品や機器を購入すれば、本来なら数年かけて行う減価償却を、購入した期に一括で経費化できます。年間の上限は300万円です。

「来年買おうと思っていたパソコンやカメラ、業務用ソフトウェア」があれば、今が絶好のタイミングです。ただし発注するだけでは足りません。3月末までに実際に受け取って初めて経費になる点を忘れずに。

3位:使っていない資産を廃棄して除却損を計上する

会社の資産台帳を見ると、「もう使っていないのに帳簿に残ったまま」の資産が眠っていることがあります。古い机、動かなくなった機械、誰も使っていないサーバーなど。こうした資産を正式に廃棄すると、帳簿上の残存価値を損失として計上できます。

「捨てるだけで節税になる」という感覚ですが、廃棄業者の証明書や写真など証拠を残しておくことが重要です。書類がないと税務調査で否認されるリスクがあります。決算前の棚卸しのつもりで、資産台帳を一度見直してみてください。

2位:決算賞与を活用する

3月31日までに全社員へ支給額を文書で通知し、4月30日までに実際に支払えば、今期の損金として認められます。社員への還元と節税を同時に実現できる、実用性の高い手法です。

ポイントは「全員への通知」であることです。一部の社員だけ通知して残りは後回し、というやり方は認められません。また、通知した金額と実際の支払額が一致していることも条件です。事前に顧問税理士と連携しながら準備を進めてください。

1位:修繕費を3月に前倒しで計上する

修繕費は、タイミング次第で大きな節税になります。60万円未満の修繕であれば一括で経費化でき、前期末の取得価額の10%以下の修繕費も同様に扱えます。

「来年やろうと思っていた内装の修繕」や「設備のメンテナンス」を3月に前倒しするだけで、今期の経費に算入できます。ただし、建物の価値を大幅に高める大規模工事は「資本的支出」として減価償却の対象になるため、修繕の規模と内容の線引きには注意が必要です。


今回紹介した5つの手法は、どれも「今すぐ判断が必要」なものばかりです。決算日まであと数週間、準備に時間がかかるものもあります。「まだ早い」ではなく「今週動く」くらいの意識で、まず顧問税理士に一本連絡を入れることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。