毎年5月になると、固定資産税の通知書が届きます。「今年も100万か……」と封を開けながらため息をついている社長さん、実は少なくないんです。
でも先日、ある社長からこんな話を聞きました。顧問税理士に固定資産税の話をしたところ、意外な言葉が返ってきたそうです。
「先生、この不動産、毎年100万も税金かかって正直しんどいんですよね」
「社長、でもその不動産、自社株の評価も下げてくれているんですよ」
一瞬、意味が飲み込めなかった、とその社長は言っていました。固定資産税と自社株。一見まったく関係なさそうな二つが、実は深くつながっている。
自社株の評価はどうやって決まるか
会社の株式を相続や贈与で次の世代に渡すとき、まず「この株はいくらなのか」を決める必要があります。上場企業なら市場価格がありますが、非上場の中小企業はそうはいきません。
非上場株の評価方法はいくつかありますが、中小企業でよく使われるのが純資産価額方式です。会社が持っているすべての資産を足して、負債を引いた純資産をもとに株価を算出する方法です。
ポイントは、資産をどの価格で評価するか、ここにあります。
法人が保有する不動産については、市場で売れる価格(時価)ではなく、土地なら路線価、建物なら固定資産税評価額が使われます。路線価は実勢価格のおよそ80%、固定資産税評価額は再建築価格の50〜70%水準が目安です。つまり、どちらも実際の市場価値より低い評価になるということです。
数字で見ると効果がよくわかる
たとえば、時価5,000万円の土地を会社が持っているとします。路線価ベースでは約4,000万円で評価されます。差額の1,000万円分、純資産が低く計算される計算です。
さらに建物も加わると、差はもっと広がります。時価1億円の不動産が、評価上は6,000〜7,000万円になるケースも珍しくありません。
この差が自社株の純資産を押し下げるため、株価が圧縮されます。事業承継で株を渡す際、相続税や贈与税の計算はこの株価をもとに行われます。純資産が2,000万円低く計算されれば、税率30〜40%のゾーンで600〜800万円の節税になり得ます。
毎年100万円の固定資産税を払いながら、将来の承継コストを何百万と圧縮している。そう考えると、固定資産税の通知書の見え方が少し変わってこないでしょうか。
取得から3年以内は要注意
ただし、ここに見落としがちな落とし穴があります。
法人が不動産を取得してから3年以内は、時価評価になります。路線価や固定資産税評価額ではなく、実際の購入金額に近い価格で計算されるため、株価圧縮の恩恵がほぼ出ません。
この「3年ルール」は、節税目的で直前に不動産を取得して株価を下げるという行為を防ぐためのものです。承継の直前に不動産を買っても、期待したような節税効果は得られないということです。
承継を10年先に見据えているなら、今から動けば時間的余裕は十分あります。でも3〜5年以内に承継を進めたい場合は、不動産の取得タイミングを慎重に設計する必要があります。
「すでに持っている不動産」を一度棚卸しする
重要なのは、すでに会社名義で不動産を持っている社長も、一度状況を整理する価値があるということです。
その不動産をいつ取得したか。3年以上前であれば、すでに路線価・固定資産税評価額で計算される恩恵を受けられる状態です。株価にどう反映されているかを顧問税理士に試算してもらうだけで、承継コストの全体像がかなり変わって見えてきます。
固定資産税の通知書が届く5月は、そういう意味で「承継コストを点検するいいタイミング」でもあります。毎年100万円を「ただのコスト」として払い続けるのではなく、「この不動産が将来の節税にどれだけ効いているか」という視点で一度眺めてみてください。
まだ事業承継を具体的に考えていない社長ほど、早めに自社株評価の現状を確認しておくことをおすすめします。相続税の問題が表面化してからでは、取れる選択肢が狭まってしまいます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。