先日、年商10億円規模の製造業の社長から、こんな連絡がありました。「息子に会社を渡して2年が経ったのに、突然税務調査が入って困っています」と。

事業承継は一生に一度の大きな決断です。ところが、承継後に税務調査が入る会社には、はっきりとした3つの「パターン」があります。これを知っていれば事前に対策できますが、知らないまま進めると、数年後に追徴課税という形で代償を払うことになります。

第3位:非上場株式の「評価方式ミス」

非上場会社の株式を後継者に渡すとき、避けて通れないのが株式の評価です。

評価方法には3種類あります。会社の規模に応じて、類似業種比準方式・純資産価額方式・2つを組み合わせた併用方式のいずれかを選ぶルールになっています。問題は、この「選択」を誤ってしまうケースが多いことです。

たとえば、本来は大会社として類似業種比準方式を使うべき会社なのに、小会社扱いにして純資産価額方式を選んでしまうと、計算結果がずれてしまいます。税務署はこの評価方式の選択を細かく確認します。根拠が薄ければ、調査で否認されるリスクが高くなります。

「顧問税理士に任せているから大丈夫」と思っている方も、承継専門の税理士やコンサルタントにセカンドオピニオンを求めることをおすすめします。

第2位:役員退職金の「功績倍率」が高すぎる

先代社長が退任するタイミングで、退職金を支払うことがあります。適切な金額であれば全額損金にできるため、節税効果が非常に大きい手段です。

計算式は「最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率」。問題になるのが、この功績倍率の設定です。代表取締役なら3.0倍以下が相場とされていますが、節税を意識するあまり4倍・5倍と設定してしまうと、税務署から「過大な役員退職金」として損金を否認されるリスクが一気に高まります。

仮に月額報酬100万円、在任30年の社長に功績倍率5倍を設定すると、退職金は1億5,000万円になります。金額が大きければ大きいほど、「その功績倍率に合理的な根拠があるか」を問われます。

功績倍率の設定は、同業他社の実態や会社への貢献度を踏まえた資料を用意した上で、専門家と慎重に決めることが大切です。

第1位:承継「前後」の業績が不自然に急変している

これが最も調査につながりやすいパターンです。

承継前に意図的に利益を圧縮して会社の株価を低く抑え、承継後に業績が急回復する。こうした動きが見られると、税務署は「株価を意図的に操作したのではないか」と疑いを持ちます。

税務署は原則として5年分の帳簿を精査できます。承継の前後2〜3年を含む期間を細かく追いかけるため、「たまたま業績が悪かっただけです」という説明が通りにくくなります。もし業績変動に正当な理由があるなら、それを裏付ける資料を事前に整えておくことが重要です。調査が入ってから慌てて説明しようとしても、後出しになってしまいます。

3つに共通する「盲点」

この3つのパターンに共通するのは、「税務署の目線を意識していない」ことです。

節税自体は合法ですし、うまく活用すれば何千万円もの効果があります。ただ、税務署が何を「不自然」と感じるか、どこに目を光らせているかを理解していないと、合法のつもりが調査の入り口になってしまいます。

事業承継は後から修正できない決断も多い。だからこそ、承継前の段階で「税務調査にも耐えられる筋の通った計画」を作ることが、長期的に見て最もコスト効率の高い対策です。

株価評価の根拠・退職金の功績倍率・承継前後の業績変動、この3点を今一度確認してみてください。承継を検討しているなら、動き出す前に専門家へ相談するタイミングが来ています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。