先日、年商10億円ほどの建設会社を経営されている60代の社長からこんな相談を受けました。「そろそろ相続の準備をしようと思って、自社の株の評価額を計算してもらったら、思っていた10倍近い金額になっていた」と、少し青ざめた様子でおっしゃっていました。

自社株の評価額は、会社の業績が上がれば上がるほど大きくなります。頑張ってきた証でもあるのですが、相続が発生したとき、その評価額がそのまま税の計算に使われると、相続税が数千万円単位で変わることもあります。

実は、この「自社株の評価額を下げること」に真剣に取り組んでいる社長は少なくありません。今回は、私が見聞きしてきたなかで、評価額を大幅に圧縮することに成功した社長たちが実践した手法を、ランキング形式でご紹介します。

第5位:役員退職金の計上

5位は、退職金の活用です。社長が引退するタイミングで適正額の役員退職金を支給すると、会社の純資産が一気に圧縮されます。自社株の評価額は純資産と密接に連動しているため、退職金を支給した後に評価額が30〜50%下がるケースも珍しくありません。

ただし、退職金の金額には「功績倍率」による適正な計算が必要です。過大な退職金は税務調査で問題になることがあるため、金額設定は慎重に行うことが大切です。また、実際に社長の役割が変わる「実態を伴う退任」であることが大前提になります。

第4位:従業員持株会の導入

4位は従業員持株会です。会社の株を従業員に保有してもらう仕組みで、評価額が約20%引き下げられることが多く、さらに従業員のモチベーションアップにもつながる一石二鳥の対策として注目されています。

持株会への譲渡には通常の売買とは異なる評価方法が使えるケースがあり、節税と組織強化を同時に実現できます。ただし、持株会の運営には規約の整備や管理コストがかかるため、ある程度の従業員数がいる会社向けの手法といえます。

第3位:不動産の購入

3位は不動産の購入です。少し意外に思われるかもしれませんが、会社で不動産を購入すると純資産の圧縮につながることがあります。その理由は、不動産の「時価」と「相続税評価額(簿価)」の差にあります。

たとえば、市場価格5,000万円の土地を購入しても、帳簿に載る評価は時価より低い相続税評価額になります。現金5,000万円がそのまま純資産に載るよりも、不動産の評価額が低い分だけ会社全体の純資産が圧縮され、株の評価額が下がるという仕組みです。ただし、不動産投資は節税だけを目的にするのは禁物で、空室リスクや管理コストも踏まえた判断が必要です。

第2位:類似業種比準価額の活用

2位は、評価方法そのものを変えるアプローチです。自社株の評価方法には大きく「純資産価額方式」と「類似業種比準価額方式」の2種類があります。純資産価額方式は会社の資産をそのまま評価するので、資産が多い会社では高くなりがちです。

一方、類似業種比準価額方式は同業の上場企業の株価指標に基づいて計算するため、業種や業績によっては純資産価額より大幅に低くなることがあります。ある製造業の社長は、利益水準と配当の見直しを組み合わせることで、この方式での評価額を純資産価額の半分以下に抑えることに成功しました。どちらの方式が有利かは業種・規模・決算の状況によって変わるため、専門家と一緒に試算してみることをおすすめします。

第1位:持株会社化(ホールディングス化)

1位は持株会社化です。これが最も強力な手法として、多くの事例で実証されています。

具体的には、社長が保有する事業会社の株を、新しく設立した持株会社に移します。すると、持株会社が保有する株は評価方法が変わることがあり、事業会社と持株会社の間に評価の「階層」が生まれるため、トータルの評価額が大幅に圧縮されるケースがあります。70%超の圧縮に成功したという事例も複数あり、資産規模が大きい会社ほど効果が出やすいとされています。

ただし、持株会社化はスキームが複雑で、設計を誤ると税務上のリスクが生じます。「他の会社がやったから」と安易に真似るのは危険で、必ず専門家とともに設計することが不可欠です。


今回ご紹介した5つの手法に共通しているのは、「自社株の評価額は、設計次第でコントロールできる」という事実です。ただし、どの手法が最適かは業種・規模・タイミング・後継者の有無などによって大きく異なります。

まず一歩目として、現時点での自社株評価額を試算してみてください。「うちは関係ない」と思っていた社長が、試算した数字を見て驚くケースは本当に多いです。相続・事業承継の準備は、早ければ早いほど選択肢が広がります。今期のうちに専門家への相談を検討してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。