先日、製造業を営む50代の社長からこんな相談を受けました。「父親が急に体調を崩して、初めて本気で相続のことを考えた。今からでも何か手を打てるか?」\n\n相続対策は、“起きてから”では遅いのです。生前贈与を使った節税は、始めたタイミングがそのまま効果の大きさに直結します。今日は社長に知っておいてほしい生前贈与の選択肢を、使いやすさと節税効果の両面からランキング形式でご紹介します。\n\n## 第3位:暦年贈与──始めた人が得をする仕組み\n\n生前贈与の定番といえば、暦年贈与です。1年間に110万円まで贈与税がかからない仕組みで、お子さんやお孫さんに毎年少しずつ財産を移していくことができます。\n\n10年続ければ1人あたり1,100万円を無税で移せる計算です。子ども2人に贈与すれば合計2,200万円が相続財産から外れますし、20年続ければ4,400万円。コツコツ積み上げる力は、意外と侮れません。\n\nただし2024年から制度が変わり、注意が必要になりました。以前は「相続発生前3年以内の贈与は相続財産に戻す」というルールでしたが、これが7年に延長されたのです。\n\n亡くなる7年前まで遡って贈与が取り込まれるということは、70代になってから慌てて始めても効果が限定されるということ。50代から動いている人と65歳から始める人では、使える年数がまったく違います。この制度は「早く始めた人が勝つ」構造です。\n\n## 第2位:相続時精算課税──2024年改正で一気に使いやすくなった\n\n「相続時精算課税」という名前を聞くと、「どうせ相続時に精算されるなら意味がないのでは」と感じる社長も多いです。確かに、以前はそういう側面もありました。ところが2024年の改正で大きく変わりました。\n\nポイントは、年間110万円の基礎控除が新設されたことです。この110万円は相続時に精算されません。つまり、暦年贈与と同じように毎年110万円を無税で贈与できる枠が生まれたわけです。\n\nさらに、累計2,500万円までは贈与税ゼロで渡すことができます。まとまった資産を一度に動かしたいタイミングに強く、特に自社株の承継での活用が増えています。\n\n自社株は事業が成長するほど評価額が上がります。株価が高くなってから動こうとすると、贈与税も相続税も大きくなる。評価が低いうちに、相続時精算課税を使って計画的に移しておくのが賢いやり方です。\n\n## 第1位:教育資金の一括贈与──「完全に切り離せる」唯一の選択肢\n\n今回のランキング1位は、教育資金の一括贈与です。孫1人あたり最大1,500万円まで非課税で贈与でき、しかも相続財産から完全に切り離せるのが最大の強みです。\n\n暦年贈与も相続時精算課税も、一定の条件下では相続財産に戻ってくるケースがあります。でもこの制度で教育目的に使いきった資金は、原則として相続財産に戻りません。\n\n孫が3人いれば最大4,500万円を相続財産の外に出せる。これは他のどの贈与制度にもない圧倒的な強みです。財産が多い方ほど、インパクトは大きくなります。\n\nただし条件があります。金融機関の専用口座を通じて管理する必要があり、使途は学費・習い事など「教育目的」に限定されます。孫の年齢や口座の期限など細かいルールも複数あるため、設計は必ず専門家に相談してください。\n\n## 今すぐ動かないと「使えなくなる」制度も出てくる\n\nこれら3つの制度に共通しているのは、「始めた人が得をする」構造だということです。特に暦年贈与は、2024年改正で加算期間が延びた今、以前より早く手を打つ必要があります。相続が見えてきてから慌てても、使える年数はどんどん減っていきます。\n\n社長は自社株という「値上がりしやすい財産」を持っているケースが多い。株価が上がる前に手を打つことが、節税の本質です。\n\nまだ生前贈与に手をつけていないなら、今期中に一度、専門家と「どの制度をどう組み合わせるか」を整理しておくのをおすすめします。動き出すのに、遅すぎることはありません。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。
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