「もう引退を考えているんですが、節税って今からでも間に合いますか?」
先日、創業25年の建設会社を経営するある社長から、こんな相談を受けました。売上も安定していて、後継者への引き継ぎも決まっている。でも、利益が積み上がっているのに「税金ばかりかかっていて、どうにかならないか」というご相談でした。
実は、引退前こそ最大の節税チャンスです。今回は、引退を視野に入れた社長が「今期中に使い切るべき」合法的な経費TOP5をご紹介します。
第5位:30万円未満なら買ったその期に全額落とせる
「少額減価償却資産の特例」という制度をご存じでしょうか。
通常、100万円のパソコンを買っても、減価償却で数年かけて少しずつ経費化していきます。でも、この特例を使えば、30万円未満のものなら購入したその期に全額経費として計上できます。年間の上限は300万円までです。
引退前なら「どうせそのうち必要な備品」を前倒しでまとめ買いするだけで、数十万円単位の節税が見込めます。PCやソフトウェア、オフィス家具など、買い替えを検討しているものがあれば、今期中が狙い目です。
第4位:飲食の交際費、2024年から上限が2倍になっていた
「交際費は接待に使っても半分しか経費にならない」という認識の社長さんが多いのですが、1人あたり1万円以下の飲食費は全額経費化できます。
これ、2024年の税制改正で旧5,000円から一気に1万円に引き上げられた制度です。得意先との食事、従業員との懇親会、商談相手との昼食——1人1万円の枠内に収まるなら、全額落とせます。
ただし「いつ・誰と・何人で・何の目的で」という記録が必須です。レシートだけでは不十分で、メモ書きでも構いませんので、必ず記録を残しておきましょう。
第3位:給与を少し上げるだけで、税額が最大45%減る
「賃上げ促進税制」は、社員の給与水準を上げると法人税そのものが安くなる制度です。
具体的には、前年比で全社員の平均給与を1.5%以上引き上げると、増額分の最大45%が税額控除されます。たとえば社員10人の会社で給与総額を100万円増やすと、最大45万円の税額控除です。「経費が増えた」ではなく「税金そのものが減る」仕組みなので、実質的な節税効果は非常に大きい。
引退が近い社長にとっては後継者や従業員の満足度向上にもつながりますので、一石二鳥の制度と言えます。
第2位:保険で退職金を積み立てながら、今の利益も圧縮する
「法人生命保険」は、設計次第では引退前の最強の武器になります。
仕組みはシンプルです。会社が保険料を払いながら、引退タイミングで解約すると解約返戻金が戻ってくる。その返戻金を退職金の財源に充てます。一定の条件のもと保険料は損金として計上できるため、払っている間は利益を圧縮でき、引退時には退職金の原資が出来上がる、という設計です。
ただし、保険の種類・タイミング・設計次第で結果が大きく変わります。「とりあえず保険に入っておく」ではなく、引退時期を明確にした上で専門家と一緒に設計することが重要です。
第1位:役員退職金——引退する社長が最後に使える最強の節税
ここまで読んでいただいた社長さんなら気づいているかもしれませんが、1位はダントツで「役員退職金」です。
計算式は「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」。たとえば月額報酬100万円・在任25年・功績倍率2.0なら、退職金は5,000万円。この全額が会社の損金(経費)になります。法人税率を30〜40%とすれば、1,500〜2,000万円の節税効果です。
受け取る社長側も、退職所得は給与所得より税率が低く、退職所得控除も大きいため、個人の手取りが大幅に増えます。引退時に「最後が一番おいしい」と言われるのは、この制度があるからです。
ただし、金額が大きすぎると「不相当に高額」として税務署に否認されるリスクがあります。功績倍率の設定・支給時期・議事録の整備など、手続きをきちんと踏むことが前提です。
引退を意識し始めた社長の方は、まず「退職金規程が整っているか」を顧問税理士に確認することをおすすめします。制度を知っているだけでなく、書類・議事録・タイミングがそろって初めて節税になる——それがこの世界の鉄則です。今期の利益が出ているうちに、動いておきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。