「社長、そろそろ出口戦略、考えてますか?」
先日、創業25年の印刷会社を経営する60代の社長から、こんな相談を受けました。「最近、引退後のことが頭をよぎるようになってきた。でも、何から手をつければいいか、さっぱりわからない」と。
長年、会社を大きくすることだけに集中してきた経営者ほど、「出口」を考えるのは後回しになりがちです。ところが2026年の税制改正を経た今、この「後回し」が何千万円もの損失につながるケースが実際に出てきています。
今回は税務の観点から、社長が今すぐ動くべき出口戦略をランキング形式でお伝えします。
第3位:事業承継税制の特例——残り1年半で期限が来る
自社株を次世代に渡す際の贈与税・相続税を、最大100%猶予してくれる制度があります。「事業承継税制の特例」です。
中小企業の自社株は評価額が数億円を超えることも珍しくなく、後継者への承継時に多額の税金が発生することが、事業承継最大の壁になってきました。この制度を活用すれば、株を渡す際の税負担を実質ゼロにできる可能性があります。
ただし、見落とせないのが期限です。この特例の申請期限は2027年12月末。申請には「特例承継計画」を都道府県知事に提出する必要があり、準備には最低でも半年以上かかるケースがほとんどです。
「来年でいいか」と先送りにして、気づいたら期限を過ぎていた——そういう社長を実際に何人も見てきました。後継者候補がいるなら、今すぐ税理士に相談することをお勧めします。
第2位:小規模企業共済——未加入の社長は今月中に確認を
「社長のための退職金制度」とも呼ばれる小規模企業共済は、月最大7万円の掛金が全額所得控除になります。年間にすると84万円が丸ごと課税所得から消えるわけです。
所得税と住民税の実効税率が合計40%の社長なら、毎年約33万円の節税になります。20年積み立て続ければ、それだけで660万円超の節税効果。これを単なる「積み立て」と見るか、「節税しながらお金を貯める仕組み」と見るかで、経営判断は変わります。
さらに魅力的なのが受け取り時の扱いです。解約時の共済金は「退職所得」として課税されるため、退職所得控除が適用されます。積み立て中も節税、受け取る時も節税——この二段構えの仕組みが多くの経営者に支持されている理由です。
ただし、加入が遅れるほど積み立て期間が短くなり、受け取れる金額も控除の恩恵も小さくなります。「いつか入ろう」と思っているなら、今月中に手続きを始めてください。
第1位:役員退職金——設計次第で1,500万円超が非課税になる
出口戦略の中で、単純な節税インパクトが最も大きいのが役員退職金です。
退職所得には手厚い控除制度があります。勤続年数が20年を超えると、1年あたり70万円の控除が積み上がります。たとえば勤続30年で退職する社長なら、退職所得控除は1,500万円。この金額が丸ごと非課税になります。
しかもこれだけではありません。退職所得は「(退職金 − 退職所得控除)÷ 2」で計算されるため、課税対象はさらに半分になります。仮に退職金3,000万円の場合、課税対象になるのは750万円だけ——という計算が成り立ちます。給与所得と比べると、その優遇ぶりは一目瞭然です。
ただし、役員退職金は「不相当に高額」と判断されると損金算入が否認されるリスクがあります。一般的には「最終月額報酬 × 勤続年数 × 功績倍率」で計算しますが、この功績倍率の設定を誤ると税務調査で指摘を受けることも。金額の設計は、必ず税理士と一緒に進めてください。
3つ全部に共通する「早く動く」理由
事業承継税制の特例も、小規模企業共済も、役員退職金も、共通点がひとつあります。準備に時間がかかる、または時間が長いほど有利になるという点です。
特例の申請期限は刻一刻と迫っています。共済は加入年数が節税効果に直結します。役員退職金は勤続年数が非課税枠の大きさを決めます。「引退はまだ先の話」と思っている社長ほど、実は今が動き時なのです。
出口を意識した設計を今期中に税理士と話し合ってみることを、強くお勧めします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。