先日、60代の製造業オーナー社長からこんな相談を受けました。「退職金を5000万もらったはいいけど、銀行口座に寝かせておくのも勿体ない。でも投資するなら税金もちゃんと考えたい」というものでした。

実はこの悩み、退職金を受け取った経営者からとても多く聞きます。苦労して会社を育ててきたお金が、何も考えずに運用すると2割以上が税金で消えてしまう。そんなことになる前に、知っておいてほしい節税手法が3つあります。


第3位:新NISAを使い倒す

まず押さえておきたいのが新NISAです。「NISAなんて少額向けでしょ」と思っている方も多いのですが、実は退職後の資産運用との相性が抜群によいのです。

年間360万円まで投資でき、そこから生まれた運用益は生涯にわたって非課税になります。生涯投資枠は1800万円。通常の株式投資なら運用益に20.315%の税金がかかりますが、NISA口座の中では一切かかりません。

仮に1800万円を20年運用して2倍になったとすると、通常なら約366万円が税金として消えていきます。NISAを使えばそれがそのまま手元に残る。退職後の長期運用においては、この差は非常に大きいです。

ただし、NISAは個人の口座なので、5000万円全額を一気に入れることはできません。毎年360万円ずつ積み上げていく位置づけで使うのがポイントです。


第2位:小規模企業共済の二重節税構造

「もう経営者を引退するから関係ない」と思いきや、まだ現役の社長であれば小規模企業共済は今すぐ始めるべき手法です。

月額最大7万円の掛け金が、全額所得控除として使えます。年間にすると84万円。所得税・住民税の実効税率が仮に40%なら、毎年約33万円の節税効果があります。10年続ければ330万円です。

加えて、受け取るときにも「退職所得控除」が適用されます。払い込んだお金を受け取る時点でも税金が抑えられるという、入口と出口の両方で得できる二重構造になっているわけです。

これは国が中小企業オーナーの退職後を支援するために設けた制度なので、使わない手はありません。まだ加入していない社長は、今期中に手続きをしておくことをおすすめします。


第1位:資産管理会社の設立

5000万円という大きなお金を動かすなら、最もインパクトが大きいのが資産管理会社の設立です。これは富裕層の間では広く使われている手法ですが、まだ知らない社長も多い。

仕組みはシンプルです。個人で受け取った退職金を、自分が設立した資産管理会社(プライベートカンパニー)に移して運用します。法人で運用することで、個人では使えなかった経費計上や損益通算が活用できるようになります。

さらに、そこから自分への役員報酬という形で受け取ることで、給与所得控除を使いながら手取りを確保できます。あるいは、この法人からもう一度「退職金」として受け取れば、退職所得控除を再び活用することも可能です。

個人で5000万円を運用して運用益が出れば、まず20.315%の税金がかかります。一方、資産管理会社を経由すれば、実効的な税負担をぐっと下げることができます。具体的な数字は状況によって大きく変わりますが、数百万単位の差が出るケースも珍しくありません。

注意したいのは、資産管理会社の設立・運営にはコストと手間がかかること、そして税務上の取り扱いが複雑になることです。必ず税理士と相談の上で設計してください。


3つを組み合わせるのが正解

この3つは排他的ではなく、組み合わせて使うことが基本戦略です。資産管理会社で全体の運用を設計しながら、個人口座ではNISAを毎年積み上げ、現役中は小規模企業共済を続ける——こうした全体設計を早めに組んでおくことが、最終的な手取りの差につながります。

退職金を受け取ってから慌てて動くのではなく、受け取る前の段階から準備しておくことが大切です。特に資産管理会社の設立は、退職金を受け取った後では遅い場合もあります。

「まだ先の話」と思っている社長こそ、今のうちに税理士と出口戦略を話し合っておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。