先日、東京で会社を経営するS社長から、こんな相談が届きました。
「役員報酬を上げたら、税金だけで年間2,000万円近く持っていかれるようになって。合法的に何とかならないですか」
利益を出せば出すほど税金に苦しむ。多くの社長が感じるこの矛盾を、S社長も抱えていました。
税理士が持ってきたのは「築古アパート1棟」だった
顧問税理士が提案したのは不動産投資でした。ただし、よくある「節税目的のワンルームマンション」ではありません。築26年の木造アパート1棟、建物部分の取得価格6,000万円というものです。
なぜわざわざ古い木造なのか。それは「減価償却」の仕組みと深く関係しています。
建物は年々老朽化するため、税務上は毎年「価値が目減りする」として経費に計上できます。これが減価償却です。木造の法定耐用年数は22年ですが、すでにそれを超えた中古物件は「法定耐用年数 × 0.2」で残存耐用年数を計算します。つまりわずか4年。
6,000万円を4年で割ると、毎年1,500万円の経費が生まれる計算になります。
損益通算で課税所得が一気に圧縮される
ここからが節税の核心です。
不動産所得(家賃収入 − 経費)が赤字になった場合、給与所得や事業所得と「損益通算」することができます。S社長の場合、年1,500万円の減価償却費によって不動産所得が大幅な赤字となり、その赤字を役員報酬の給与所得にぶつけることができました。
結果として課税所得が圧縮され、所得税の実負担は約3割減。年間の節税効果は600万円規模に達しました。4年間継続すれば、累計で2,400万円以上の税負担が軽くなる計算です。
役員報酬はそのまま、物件から家賃収入も入る。にもかかわらず税金は3割安くなる。数字だけ見ると魔法のようですが、これは税法に則った正当な節税手法です。
「出口」を間違えると節税効果が吹き飛ぶ
一方で、必ず押さえておきたいのが出口戦略のリスクです。
減価償却中は毎年大きな経費が生まれますが、償却が終わった後に物件を売却すると、取得費が圧縮されている分だけ「譲渡所得」が膨らみます。売却益に対して最大39.63%の税率がかかるケースもあり、節税した分を売却時に一気に吐き出してしまうことになりかねません。
また、物件の選定を誤ると、空室リスクや修繕コストが節税効果を食い潰すこともあります。「節税になるから」と安易に飛びつくのは危険で、不動産としての収益性と税務効果を両面から検討することが欠かせません。
2023年以降、不動産節税を取り巻くルールの変化も速くなっています。最新の税制動向を把握した税理士・不動産専門家への相談は、この手法を使う上での前提条件と考えてください。
高所得の社長こそ「減価償却の力」を知っておく
役員報酬が高ければ高いほど、所得税・住民税の実効税率は上がります。課税所得4,000万円超では所得税だけで45%。住民税10%と合わせると、稼いだお金の半分以上が税金に消える計算です。
こうした高所得者にとって、築古不動産の減価償却は数ある節税手法の中でも効果が大きい選択肢の一つです。ただし大切なのは「物件ありき」ではなく「自分の税務状況ありき」で考えること。まずは顧問税理士と、現在の課税所得とキャッシュフローを整理するところから始めてみてください。
今期の所得税の納付額を見て「高すぎる」と感じているなら、一度、不動産を活用した節税について専門家に話を聞いてみるのが良いタイミングかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。