先日、岡山で製造業を営む60代の社長からこんな相談を受けました。\n\n「息子に会社を渡したいんだけど、税金が重すぎて動けない」と。\n\n自社株の評価額は5億円。後継者に渡すとなると、相続税・贈与税が重くのしかかってくる。経営は順調なのに、承継の話になると表情が曇る。そういう社長はとても多いです。\n\nただ、この社長には10年前に仕込んだ”切り札”がありました。\n\n## たった1本の保険が、10年後に効いてくる\n\n顧問税理士の提案で、10年前に法人保険を1本だけ契約していました。特別なものではなく、よくある法人向けの逓増定期保険です。\n\nその解約返戻金率が、いまちょうど85%になっていた。積み立ててきた保険料が高い率で戻ってくる状態です。\n\nこの解約返戻金を、社長の退職金の財源に充てる。それだけです。でもこれが、保険なしの場合と比べて約2億円の差を生みました。\n\n## なぜ「退職金経由」でここまで変わるのか\n\nポイントは2つあります。\n\nひとつは法人側の損金算入。退職金として支払った金額は会社の経費になります。利益が圧縮され、法人税が下がる。\n\nもうひとつが個人側の退職所得控除。退職金には、給与や配当とは別枠の控除が使えます。同じ金額を受け取るにしても、「退職金として受け取る」というだけで、課税される金額がまるで変わるんです。\n\nこの2つが組み合わさることで、保険なしのシナリオと比較したときの手取り差額が、約2億円にのぼることがあります。数字だけ見ると信じがたいですが、退職所得控除の威力はそれだけ大きい。\n\n## 「保険なし」で引退するとどうなるか\n\n退職金の財源が用意されていない場合、社長が手元に残るお金を増やすには選択肢が限られます。\n\n利益を配当として受け取るか、役員報酬を高く設定し続けるか。どちらも税率が高く、資金効率の悪い方法です。\n\n一方、法人保険で計画的に積み立てておくと、解約返戻金が高いタイミングで一括解約し、退職金として受け取れます。法人のキャッシュも戻ってきて、株価の引き下げにもつながる。この「設計のタイミング」こそが、法人保険の本当の使いどころです。\n\n## 「誰が」「いつ」かけるかで結果が変わる\n\n重要なのは、準備のタイミングです。\n\n逓増定期保険のような商品は、解約返戻金がピークになるまでに5年から10年かかることがあります。承継の1〜2年前に慌てて契約しても、ピークが来る前に解約せざるを得ない。設計が崩れます。\n\n今回のケースが機能したのは、10年という準備期間があったから。5年前の契約だったら、返戻率も低く、退職金の設計も変わっていたはずです。\n\n事業承継の節税は、動き出す速さがそのまま選択肢の広さになります。\n\n## 「保険=節税」という古い考え方には注意\n\nひとつ誤解してほしくないことがあります。\n\n2019年以降の税制改正で、法人保険料の損金算入には制限がかかりました。「保険をかけておけば節税できる」という単純な時代は終わっています。\n\n大切なのは、事業承継の全体像の中で保険を位置づけること。退職金の額、自社株の評価、後継者への移転のタイミング。これらを統合して初めて、大きな差が生まれます。保険単体ではなく、設計の一部として捉えてほしいです。\n\n## まずここだけ確認してみてください\n\nすでに法人保険を持っているなら、解約返戻金のピークがいつかを確認してください。そのタイミングが事業承継と合っているかどうかが、最初の判断軸になります。\n\nまだ保険をかけていないなら、今が動き出す好機です。承継を意識し始めた今から10年の準備期間が取れるかどうかで、将来の選択肢が大きく変わります。\n\n顧問税理士や事業承継の専門家に、まず自社株の評価額と退職金の設計から相談してみてください。「保険1本」の話は、その先に出てくることが多いです。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。
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