先日、顧問先の社長からこんな連絡が来ました。

「保険屋から『3000万の生命保険に入れば相続対策バッチリです』と言われたんですが、本当ですか?」

その場ですぐに「契約内容を見せてください」とお願いしたのですが、設計書を確認してみると、なかなか危うい内容になっていました。

生命保険は確かに相続対策として有効な手段です。でも「入っておけば安心」と思って放置していると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。今日は知っておくべき3つのリスクをお伝えします。

「全額非課税」は完全な勘違いです

まず、最もよくある誤解から話しましょう。

「生命保険は相続税が非課税になる」という話は正しいのですが、全額が非課税になるわけではありません。非課税になるのは「500万円 × 法定相続人の数」までです。

仮に法定相続人が奥様と子ども1人の計2人だとすると、非課税枠は500万円 × 2人 = 1,000万円。3,000万円の保険金を受け取っても、残りの2,000万円はそのまま相続税の課税対象になります。

「非課税」という言葉が独り歩きして、3,000万円全額が節税できると思い込んでいる方は本当に多い。営業マンが「非課税になりますよ」と言うとき、その説明の精度には十分注意してください。

契約の「三者関係」を間違えると贈与税になる

もう少し複雑な話ですが、これが最も重要かもしれません。

生命保険には「契約者」「被保険者」「受取人」という3つの立場があります。この組み合わせによって、どの税金が適用されるかがガラリと変わるんです。

相続税が適用されるのは、「契約者=被保険者、受取人=相続人」というパターン。つまり、夫が自分に保険をかけて、妻や子が受け取る形です。

ところが、「契約者=夫、被保険者=妻、受取人=子」という形で組んでしまうと、これは贈与税の対象になります。贈与税の最高税率は55%。相続税の最高税率55%と同じに見えますが、実効税率の計算が異なり、状況によっては相続税より重い課税になることがあるんです。

保険の契約書は細かくて読みにくいですが、誰が契約者で誰が受取人かは必ず確認してください。設計の段階で税理士に見てもらうのが一番確実です。

2021年以降、「昔の節税手法」はほぼ封じられた

最後は、特に要注意な話です。

数年前まで、「名義変更プラン」と呼ばれる保険を使った節税スキームが広く使われていました。保険の契約者を親から子へ変更する際の評価額の低さを利用して、財産を移転する手法です。

ところが2021年、国税庁がこのスキームへの規制を明確化しました。評価方法が変わり、旧来の手法は実質的に使えなくなっています。

問題なのは、古い提案書がそのまま使い回されているケースがあることです。2019年や2020年に作られた設計書をもとに「今でも有効な節税です」と言われることがあるのですが、現在の税務上の取り扱いは当時と異なります。指摘されれば追徴課税になりかねません。

「保険会社から提案書をもらった」という場合は、必ず作成年月日を確認してください。2021年より前のものなら、現行税制での有効性を税理士に改めて確認することを強くお勧めします。

保険は「入れば終わり」ではない

相続対策における生命保険の活用自体は、今でも有効な手法のひとつです。ただ、契約設計の細部と、税務上のルール変更に常に目を向けておく必要があります。

特に「相続対策」という目的で保険に入っているなら、一度契約内容を見直してみてください。契約者・被保険者・受取人の関係が正しく組まれているか、非課税枠の計算が実態に合っているか、設計書が最新の税制に対応しているか。

保険はファイナンシャルプランナーや保険代理店に任せきりにせず、税理士と連携しながら設計するのが安心です。「保険と税金は別の話」と思っていると、思わぬところで痛い目を見ることがあります。

今の契約内容に少しでも不安があれば、早めに専門家へ相談してみてください。相続は一度起きると取り返しがつかないので、備えは早いほど選択肢が広がります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。