先日、相続対策の相談にいらした社長がこんなことをおっしゃっていました。

「うちは資産が4億あるから相続税が心配で。でも保険には入ってるし、まあ大丈夫かな」

そこで保険証券を見せてもらったところ、死亡保険金の受取人が「会社(法人)」になっていたんです。これ、実は大きな落とし穴です。せっかく保険に入っていても、この設定ミスだけで数千万円単位の節税効果が丸ごと消えてしまいます。

生命保険には「相続税がかからない枠」がある

意外と知られていないのですが、生命保険の死亡保険金には、法律で定められた非課税枠があります。

計算式はシンプルです。500万円 × 法定相続人の人数

法定相続人が6人いれば、3,000万円がまるごと相続税の対象から外れます。4人なら2,000万円、2人でも1,000万円です。財産が億単位になってくる経営者の方でも、この枠をきちんと使い切るだけで、相続税の負担はがらっと変わってきます。

なぜ使い切れていない社長が多いのか

「生命保険には入ってる」という社長はたくさんいます。でも、非課税枠をフル活用できているかというと、そうじゃないケースが本当に多い。

よくあるのが、保険金額そのものが少ないパターンです。500万円×相続人数という枠があるのに、死亡保障の合計が枠を大幅に下回っている。もったいない状態です。

次が、冒頭でお話しした受取人の設定ミス。受取人が「法人(会社)」になっていると、個人の相続財産として扱われないため、非課税枠が一切使えません。受取人は必ず「相続人個人」にする必要があります。

もうひとつ、そもそも非課税枠の存在を知らないまま加入しているケース。「万が一のため」として入っているだけで、節税設計になっていないんです。

3000万円の節税インパクトを数字で考える

仮に相続財産が3億円あって、法定相続人が6人いるケースを考えてみましょう。

非課税枠(500万円×6人=3,000万円)を使い切ると、課税対象の財産は3億円ではなく2億7,000万円で計算されます。数億円規模の相続では税率が30〜40%台になることも珍しくないので、3,000万円の課税財産が減れば、相続税の節税効果は1,000万円を超えることも十分あり得ます。

「保険の受取人を変えるだけで、それだけ変わるの?」と思うかもしれません。でも、設計と受取人の指定次第で、それだけの差が生まれるのが相続対策の世界なんです。

今すぐ確認すべき3つのポイント

保険を使った相続対策を始めるなら、まず現状把握が先です。手元にある生命保険の証券を引っ張り出して、以下の3点を確認してみてください。

  • 死亡保険金の合計が「500万円×法定相続人数」を下回っていないか
  • 受取人が法人(会社)になっていないか
  • 契約者・被保険者・受取人の三者関係が正しく設計されているか

特に3番目は少しテクニカルな話になります。誰が契約者で誰が保険料を払っているかによって、死亡保険金の課税区分(相続税・所得税・贈与税)がまったく変わってくるんです。ここを間違えると、非課税のつもりが課税対象になってしまうこともあります。

相続対策は「保険に入ればOK」ではなく、「どう設計するか」が肝心です。保険証券を持って、相続に詳しい税理士に一度見てもらうことをおすすめします。

財産が1億円を超える方は、特に放置が危険です。まだ保険の設計を見直していないなら、今年中に一度確認しておいてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。