先日、食品卸業を営む社長から、こんな電話がありました。

「税理士に自社株を試算してもらったら、評価額が10億を超えていると言われました。相続税がどれだけかかるか考えたら、夜も眠れなくて……」

自社株の評価が高いということは、会社の業績が良いということでもあります。経営者として誇らしいことですが、相続が発生した瞬間、その評価額に税率がそのままかかってきます。最高税率は55%。10億円なら相続税だけで数億円という計算になります。しかも自社株は現金ではないので、「税金を払うために株を売る」という状況にもなりかねません。

ただ、安心してください。合法的な方法で自社株の評価額を引き下げる手段は、いくつかあります。今日はその代表的な4つを、効果の高い順にご紹介します。

第4位|不動産投資で「評価の換算ルール」を活用する

会社に現金が積み上がったまま相続が起きると、その現金は額面どおりに評価されます。100万円は100万円。当たり前のようですが、これが高い相続税を招く一因です。

ところが、その現金を賃貸不動産に換えると、評価の仕組みが変わります。土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」で評価されるため、時価の6〜7割程度まで圧縮されるケースが多いのです。さらに賃貸に出していれば「貸家建付地」として追加の評価減も加わります。

1億円の現金を不動産に換えると、評価額が5,000〜6,000万円台になることも珍しくありません。現金比率が高い会社ほど、この手法の効果は大きくなります。

ただし、実態のない不動産投資は税務署に否認されるリスクがあります。あくまで事業目的として成立する規模・用途を選ぶことが大前提です。

第3位|株式を分散させて「評価方式」そのものを変える

自社株の評価方式には、大きく分けて2種類あります。「原則的評価方式」と「配当還元方式」です。

後者の配当還元方式は、株主が受け取る配当を基準に評価するため、評価額がかなり低く抑えられます。問題はこの方式が適用されるのが「支配権を持たない少数株主」に限られる点です。

そこで活用されるのが、株式分散の手法です。後継者以外の親族——兄弟、叔母、甥っ子など——に株式の一部を渡すことで、その株主については配当還元方式が適用されます。原則的評価方式で1株5万円の株が、配当還元方式では500円になるケースもあります。数十分の一、場合によっては100分の1以下になる話なので、評価圧縮の効果は相当なものです。

ただし、支配権を失わないよう議決権の管理は慎重に行う必要があります。誰にどれだけ渡すかの設計を、専門家と丁寧に詰めることが不可欠です。

第2位|役員退職金で「利益」と「純資産」を同時に下げる

役員退職金は、会社の費用として損金算入できます。つまり、支給した年の利益が下がります。

それだけではありません。退職金を支払うことで会社の現預金(純資産)も減少します。株価評価に使われる「1株あたりの利益」と「1株あたりの純資産」が両方下がるため、評価額にダブルで効いてくるわけです。

税務上の計算式は「最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率」が目安とされており、代表取締役なら功績倍率3倍まで許容されることが多いです。20年在任で月額報酬100万円の社長なら、最大6,000万円の退職金を損金算入できる計算になります。

重要なのはタイミングです。相続が発生してから慌てて出しても、遡及して評価を下げることはできません。元気なうちに、計画的に設計しておくことが肝心です。

第1位|類似業種比準価額を「複数年計画」で引き下げる

最も効果が高く、かつ根本的な手法です。

類似業種比準価額とは、上場企業の平均と比較して自社株を評価する方式で、「1株あたりの配当・利益・純資産」の3つが軸になります。この3つの数値を1〜3年かけて計画的に引き下げていく——それがこのスキームの核心です。

利益を適切に活用してコントロールする、純資産を退職金や設備投資で抑える、配当水準を見直す、といった手法を組み合わせます。単年度でどれか一つを下げても効果は限定的で、3つの数値を複数年にわたって総合的にマネジメントすることで、評価額を3〜5割引き下げられる可能性があります。

怖いのは、この計画を持たないまま突然相続が発生した場合です。10億円の評価額がそのまま課税対象になり、数億円規模の税負担が生じることになります。「知らなかった」では済まされない話です。

動き出すなら、今です

自社株の評価対策は、相続が近づいてから始めても手遅れになることがあります。特に類似業種比準価額の調整は最低でも1〜3年のリードタイムが必要です。

まずは現在の自社株評価額を試算してもらうところから始めてみてください。「うちはまだ先の話」と思っていても、業績の良い会社ほど評価は積み上がっています。数字を見てから動き出すと、意外と時間がないことに気づくはずです。信頼できる税理士に「株価対策の相談をしたい」と一声かけるだけで、選択肢はぐっと広がります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。