先日、創業22年・年商2億5千万円の金属加工会社を営む社長から、こんな相談を受けました。「自社株って、上場してるわけじゃないし、帳簿上の金額もそんなに多くないから、たいした額にならないだろうと思っていたんですよ」と。

実際に評価してみると、その会社の自社株はおよそ2億8千万円。社長は絶句していました。

黒字を出し続けた会社ほど、株価が高くなる

自社株の評価額は、会社の業績に連動して動きます。中小企業でよく使われる「純資産価額方式」では、会社に積み上がった内部留保がそのまま株価に反映されます。

つまり、会社が黒字を出すたびに、株価もじわじわと上がっていくのです。毎年2,000万円の利益を10年間積み上げれば、それだけで評価額は2億円分増える計算になります。創業20年を超えると、設立当初の3倍以上になっているケースも珍しくありません。

「黒字が続いて良かった」はずの会社経営が、そのまま相続税の重荷になっている——これが、多くの社長が気づかないうちに陥っているリスクです。

評価方法は2種類、どちらも「業績次第」

自社株の評価には、主に2つの方法があります。

ひとつは「類似業種比準方式」。同業の上場企業の株価をベースに、配当・利益・純資産の3要素で算出する方法です。業績が良ければ、上場企業の株価と連動して評価額も上がります。

もうひとつが「純資産価額方式」。会社の資産から負債を引いた純資産をそのまま基準にします。内部留保が多いほど、評価額も高くなります。

中小企業の場合、多くのケースでこの2つを組み合わせた方法が採用されます。どちらにしても「業績が良い=株価が高い=相続税も高い」という構造は変わりません。

相続税の納税資金が用意できないという現実

自社株の評価額が3億円の場合、相続税の実効税率によっては1億円を超える税額になることもあります。

問題は、相続税は現金で納税しなければならない点です。会社の口座ではなく、個人の財産から。「自社株の評価は高いのに、手元に現金がない」という状況に陥ると、金融機関からの借入で納税することになり、場合によっては会社経営にも影響が出かねません。

生前に何も手を打っていなかった場合、後継者がこの問題をそのまま引き受けることになります。

対策は3つ、早ければ早いほど効果が大きい

①役員退職金で内部留保を圧縮する

社長が退職するタイミングで多額の退職金を支払い、会社の純資産を減らす方法です。退職金は損金に算入できるため、法人税の節税にもなります。ただし、事前に役員退職金規程を整備しておくことが前提条件です。

②生命保険を活用して株価を引き下げる

法人で生命保険に加入し、保険料を損金として計上することで純資産を圧縮します。2019年の税制改正以降、損金算入できるタイプが限られてきているため、最新のルールを確認しながら設計することが重要です。

③持株会社に株式を移転する

自社株を持株会社(ホールディングカンパニー)に移し、その株式を少しずつ後継者に渡していく方法です。うまく設計すれば評価額を下げながら株式を分散させることができ、長期的な事業承継の仕組みとして機能します。

どの対策も、「今始めるか」「5年後に始めるか」で効果が大きく変わります。株価が高くなった後では、圧縮できる余地も狭まってしまうからです。

「うちは小さい会社だから」は禁物

年商1〜3億円規模の会社でも、20〜30年の歴史があれば、内部留保が積み上がって自社株が1億〜3億円になっているケースは非常に多いです。金額の大きさと会社の規模は、必ずしも比例しません。

まずは顧問税理士に「うちの自社株、今いくらになりますか?」と聞いてみることから始めてみてください。評価額を把握するだけで、対策の優先度が一気に見えてきます。早く動けば動くほど、選択肢も節税余地も大きく広がります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。