先日、工場と事務所を自社保有しているメーカーの社長からこんな相談を受けました。
「毎年200万円近い固定資産税を払っているんだけど、これって本当に仕方ないの?」
多くのオーナー社長が、固定資産税をほぼ「どうにもならない固定費」と割り切って処理しています。銀行口座からの自動引き落としに設定して、深く考えないまま10年、20年と払い続けているケースが後を絶ちません。
でも実は、制度として用意されている権利を使えば、年間で数十万から100万円以上を削減できる可能性があります。今日はその2つの手法をお伝えします。
結論から言います
手法は2つです。ひとつは会社の土地に社宅を建てて、住宅用地特例を適用すること。もうひとつは課税明細書を専門家に精査してもらい、誤りを是正することです。
どちらも派手なスキームではなく、制度として当然に認められた権利です。知っているかどうかの差でしかありません。
手法①:社宅を置くだけで固定資産税が「6分の1」になる
固定資産税には「住宅用地特例」という制度があります。住宅が建っている土地は、税額の計算ベースとなる課税標準が大幅に圧縮されるルールです。
200㎡以下の小規模住宅用地なら課税標準が6分の1、それを超える部分も3分の1まで下がります。そして、この特例は法人が保有する土地にも適用されます。
具体的なケースをお伝えします。会社所有の土地に対して年150万円ほどの固定資産税を払っていたある社長が、その土地の一角に役員社宅を設置したところ、翌年の固定資産税が30万円台まで下がりました。1年で120万円近い差です。10年続ければ1,200万円超の効果になります。
「建物を建てるコストがかかるのでは」というご心配はもっともです。ただ、もともと遊休地だった場所を活用するケースや、中古建物を移設・改装する形で抑えるケースでは、初期投資に対するリターンが非常に大きくなります。
ひとつだけ注意してほしいのが、居住実態を伴うことです。形式的に建物を置くだけでは税務調査で否認されるリスクがあります。役員や従業員が実際に生活する社宅として運用することが前提になります。
手法②:明細書の精査で「誤課税」が発覚するケースがある
固定資産税の評価額は3年に1度しか見直しがありません。そしてその計算の根拠となる「地目」や「面積」に、誤りが混入していることが実は珍しくないのです。
地目とは土地の種別のことで「宅地」「農地」「雑種地」などがあります。これが実態と異なる分類になっていると、適用される税率や特例が変わり、余計な税額を払い続けることになります。面積の誤りも同様です。
ある物流会社では、長年「雑種地」として課税されていた一部の土地が「宅地相当」として認められ、過去数年分の是正と還付が実現しました。担当した社長の「ずっとそういうものだと思っていました」という一言が忘れられません。
手法①と違い、こちらは初期費用がほとんどかかりません。固定資産税の専門家(不動産鑑定士や固定資産税に詳しい税理士)に課税明細書を見てもらうだけで、改善の余地があるかどうかがわかります。是正額が大きければ、依頼費用を大きく上回るリターンになります。
なぜ誰も教えてくれないのか
この2つが広く知られていない理由はシンプルです。市区町村が「あなたはもっと安くできますよ」と教えてくれることはありませんし、税理士も法人税・消費税の申告業務が中心で、固定資産税の精査まで踏み込まないことが多いのが現状です。
つまり、知っているかどうかで数百万円単位の差が生まれる世界です。
今日から動けること
まず、直近の固定資産税の「課税明細書」を引き出しから探してみてください。毎年4月頃に市区町村から送られてくる書類です。
そこに記載されている地目・面積・評価額が実態と合っているか、固定資産税に詳しい専門家に一度見せるだけで、改善余地があるかどうかが見えてきます。また、会社保有の土地で活用しきれていない部分がある社長は、社宅設置の可能性を税理士と相談する価値があります。
固定資産税は毎年確実に出ていく固定費です。1回の見直しで10年・20年単位の効果が出る可能性があります。まだ課税明細書を専門家に見せたことがない社長は、ぜひ今年中に確認することをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。