毎年6月になると、市区町村から「固定資産税・都市計画税 納税通知書」が届きます。金額だけ確認して引き出しの奥にしまうか、そのまま捨ててしまうか——そんな扱いをしている方も多いのではないでしょうか。
でも実は、この通知書に書かれた一つの数字が、あなたの将来の相続税額に直結しています。気づいていない社長が驚くほど多い、固定資産税と相続税の「連動の仕組み」をお伝えします。
家屋の相続税評価額は「固定資産税評価額」がそのまま使われる
相続税の計算では、土地は「路線価」や「倍率方式」で評価されますが、建物(家屋)だけはルールが違います。
家屋の相続税評価額は、固定資産税評価額と完全に一致します。つまり、6月の通知書に記載されている建物の評価額が、そのまま相続税の計算の基礎になるわけです。これは税法上の取り決めで、建物については各市区町村が定めた評価額を相続税でもそのまま流用する仕組みになっています。
ということは逆に言えば、固定資産税の評価額が下がれば、相続税評価額も自動的に下がる。両者は連動しているのです。
評価額が1,000万円ズレていたら、税額は300万円変わる
具体的に考えてみましょう。実際の価値より1,000万円ほど評価額が過大に設定されていたとします。相続税の実効税率が30%の資産規模であれば、それだけで税額に300万円の差が生まれます。
評価が1,000万円高すぎる × 税率30% = 300万円の過払い相続税
これは決して大げさな話ではありません。建物の固定資産税評価額は3年ごとに見直されますが、経年劣化の反映が不十分だったり、増改築後の実態が更新されていなかったりするケースは珍しくないのです。特に築年数の経った建物や、一部を用途変更した物件では、実態と評価額がズレている可能性があります。
「評価額に異議を唱えられる」と知っている社長は少ない
「毎年固定資産税は払っているけど、評価額が正しいかどうか確認したことはない」——こう話すオーナー社長の方は非常に多いです。固定資産税の評価額は行政が決めるもので、自分が口を挟める余地はないと思っている方がほとんどです。
でも実際には、評価額に疑義がある場合、「固定資産評価審査委員会」に審査の申し出ができます。重要なのは期限で、評価が公示された日(通知書の送付日)から原則3ヶ月以内に申し出が必要です。この期限を過ぎると、基本的に不服を申し立てることができなくなります。
つまり6月の通知書は、審査請求の起算点でもあるのです。届いたその月に中身を確認することに、大きな意味があります。
通知書が届いたら確認してほしいこと
通知書を手にしたら、評価額の数字と合わせて、以下の点を押さえておいてください。
前回(3年前)と比べて評価額が大きく増えていないか。増えている場合はその根拠を把握しておく価値があります。また、床面積や構造の欄が実態と合致しているかも見てみてください。増改築後に登録情報が更新されていないケースは意外とあります。さらに、耐震改修や省エネ改修を行った場合に受けられる減額措置が、きちんと適用されているかも確認ポイントです。
これらに一つでも「おや?」と感じる部分があれば、専門の税理士や不動産鑑定士に相談してみてください。
相続税対策は、今払っている税金の「見直し」から始まる
相続税対策と聞くと、生命保険の活用や暦年贈与の話が先に出てきがちです。もちろんそれらも重要ですが、すでに毎年払っている固定資産税の評価額を見直すだけで、将来の相続税負担が変わる可能性があることも知っておいてほしいのです。
新しいことを始めるより、今ある数字を正確にする。それだけで数百万単位の差が生まれることが、相続税の世界では珍しくありません。
今年の通知書がまだお手元にある方は、評価額の欄を一度だけ確認してみてください。それが、専門家に相談する最初のきっかけになるかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。