「退職前に何に投資すればいいか、正直迷っているんですよ」
先日、会社の売却を5年以内に見据えて動き始めた60代の製造業オーナーから、こんな相談を受けました。数億円の売却益が見込めるとはいえ、それまでの間に手元資金をどう動かすかが、最終的な手取り金額に大きく影響します。
出口前の投資選びで失敗している社長は、思いのほか多いものです。「これが一番節税になる」と信じて始めた投資が、実際には税効果が薄かった。あるいはタイミングを誤って、逆に課税が膨らんだ——そんなケースを何度も見てきました。
今日は、出口前に選ぶべき投資を3位から順に整理します。1位と3位では実質利回りが2倍以上変わることもあるので、ぜひ最後まで読んでみてください。
3位:不動産投資——魅力はあるが、出口前は要注意
「資産家はやっぱり不動産」というイメージは根強いですね。相続評価額を下げられること、毎月のキャッシュフローが生まれること——この2点は確かに魅力的です。
ただし、出口直前に不動産投資を始めることには、大きな落とし穴があります。流動性が低いため、引退や売却のタイミングで換金できないリスクが高い。さらにローン金利・管理費・修繕費・空室リスクをすべて差し引くと、実質利回りは3%以下になることも珍しくありません。
相続税対策が主目的であれば有効な選択肢ですが、「5年以内に引退したい」という局面ではあまりフィットしません。出口前の不動産購入は、思った以上に「身動きが取れなくなるリスク」を伴うのです。
2位:倒産防止共済——節税力は高いが、タイミングが命
経営セーフティ共済とも呼ばれるこの制度、ご存知の社長も多いでしょう。掛金が年間最大240万円まで全額損金になるため、実効税率30%なら年72万円の節税になります。5年継続すれば累計360万円のインパクトです。
ただし、ひとつだけ致命的な注意点があります。退職・廃業のタイミングではなく、それより前に解約してしまうと、解約返戻金が一括で益金算入されます。つまり、タイミングを誤ると、節税どころか大きな課税負担が一気に発生します。
「とりあえず入っておけばいい」という制度ではありません。解約タイミングと退職のタイミングを税理士と綿密にすり合わせることが、絶対条件です。
1位:小規模企業共済——税制優遇が積立時と受取時の二段構え
「知っているけど、まだ入っていない」社長が本当に多い制度です。月7万円、年間84万円を積み立てると、その全額が所得控除になります。所得税・住民税の合算税率が40%なら、年33万円以上の節税効果があります。
それだけでも十分魅力的ですが、最大の強みは受け取り時にあります。退職時に一括受け取りを選ぶと退職所得として扱われ、退職所得控除が適用されます。加入期間が長いほど控除額は大きくなり、場合によってはほぼ非課税で受け取れることもあります。
積み立て期間中の節税効果と、受け取り時の税優遇を合わせた実質利回りは、不動産投資の2倍以上になることも珍しくありません。しかも流動性リスクはゼロ、物件管理のような煩雑さも一切ありません。
出口が近いほど、選択を急ぐ必要がある
不動産は長期保有前提なら悪い選択肢ではありませんが、出口を5年以内に見据えているなら換金リスクが足を引っ張ります。倒産防止共済は節税インパクトが大きい反面、解約タイミングの管理を誤ると逆効果になります。
小規模企業共済は、積み立てから受け取りまで一貫して税制優遇が効く、最もシンプルで確実な選択肢です。まだ未加入の社長は、今期中に動き出すことを強くおすすめします。
出口戦略は、早く始めるほど選択肢が広がります。「引退はまだ先の話」と思わず、今の段階から税理士と一緒に設計しておきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。