先日、創業15年の社長からこんな相談を受けました。
「退職金って、結局は自分で積み立てるしかないんですよね?」
そう思っている社長は、じつは多い。でも少し待ってください。退職金の原資を「経費」で作りながら節税できる仕組みが、すでに存在しています。しかも、組み合わせ次第では年換算500万円以上の節税効果が出ることも、珍しくないのです。
今回は、実際の現場でよく使われている3つのスキームを、わかりやすくお伝えします。
第3位:経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
月20万円、年間240万円まで全額損金に落とせる制度です。これを知らずに使っていない社長がいるとすれば、それだけで毎年かなりの節税機会を逃していることになります。
積み立てた掛金は、解約時に返ってきます。その解約返戻金を退職金の原資として活用できる設計にするのが、このスキームの肝です。仮に実効税率35%とすれば、年240万円の損金算入で毎年84万円の節税。10年積み立てれば、840万円の節税効果になります。
ただし、解約のタイミングには注意が必要です。解約返戻金は益金(収入)として戻ってくるため、退職金と相殺できる年度に合わせて解約するのが鉄則です。タイミングを間違えると、せっかくの節税効果が一気に吹き飛んでしまいます。
第2位:法人生命保険による損金設計
「保険で節税」という言葉を聞いたことがある社長は多いと思います。2019年以降、国税庁の通達改正で設計の自由度は狭まりましたが、今でも保険料の一部を損金算入しながら解約返戻金を退職金の原資に充てる仕組みは有効です。
ポイントは「損金割合」と「解約返戻率のピーク」を合わせること。損金算入できる割合は解約返戻率の高さによって変わり、設計の精度が節税効果を左右します。商品ごとにルールが異なるため、保険会社の担当者任せにせず、必ず税理士と一緒に試算することをおすすめします。
なお、「とにかく損金が大きい保険」を勧めてくる営業トークには要注意です。損金が大きいということは解約返戻率が低い傾向があり、結果として手元に残るお金が少なくなるケースもあります。節税額だけでなく、キャッシュフロー全体で考えることが重要です。
第1位:役員退職金の損金算入設計
最もインパクトが大きいのが、この仕組みです。役員退職金は「月額報酬 × 勤続年数 × 功績倍率」で計算し、適正額であれば全額損金に算入できます。功績倍率は代表取締役で目安2〜3倍とされており、この数字の設計が節税効果を大きく左右します。
たとえば月額報酬100万円・勤続20年・功績倍率2.5倍であれば、退職金の適正額は5,000万円。これを全額損金に落とせるわけです。さらに受け取る側(社長個人)にとっても、退職金は給与より税負担が軽い「退職所得控除」が適用されるため、法人・個人の両方で大きな節税になります。
ただし、「功績倍率を高く設定すれば節税できる」という単純な話ではありません。同業他社の支給水準や会社の規模・業績との整合性が問われ、過大退職金と判定されれば損金算入が否認されるリスクがあります。税務調査で否認されると、追徴課税に加えて延滞税や加算税まで課される可能性があるので、設計段階から税理士に関与してもらうことが必須です。
3つを組み合わせると何が起きるか
経営セーフティ共済で年240万円の損金、法人生命保険で年間数十万〜百万円超の損金、さらに退職金設計を丁寧に組み立てる。この3つをうまく組み合わせると、法人・個人トータルで年換算500万円を超える節税効果が現実的に見えてきます。
もちろん、会社の規模や利益水準、社長の年齢と勤続年数、キャッシュフローの状況によって最適解は大きく変わります。「この3つをやれば必ず500万円節税できる」という話ではありませんが、少なくとも「自分の会社ではどれくらいの効果が出るか」を一度試算してみる価値は十分あります。
まだこれらのスキームを整備していない社長は、まず決算前に税理士へ相談してみてください。退職金の設計は「引退を考え始めてから動く」では遅く、在職中から仕込んでおくものです。早く始めるほど、複利的に効果が積み上がっていきます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。