先日、顧問先の社長からこんな話を聞きました。「自動車税の通知が来たんだけど、これって経費になるの?」と。聞けば、会社の移動にほぼ毎日使っている車が、ずっと個人名義のままだったというんです。

毎年5月になると届く自動車税の通知書。排気量によっては数万円にもなるこの税金、個人名義のままだと1円も経費になりません。でも法人名義に変えるだけで、話がまったく違ってきます。

「法人名義」にするだけで何が変わるのか

社用車を法人名義にすると、その車に関わるほぼすべての費用が損金(経費)に計上できるようになります。具体的に並べてみましょう。

自動車税、任意保険料、車検費用、ガソリン代、駐車場代、高速道路料金。これらを合計すると、年間で50万円を超えるケースは珍しくありません。実効税率30%で計算すると、それだけで約15万円の節税になります。

ちょっと立ち止まって考えてみてください。15万円といえば、決算対策で駆け込みで購入する備品の金額と大差ないですよね。それが毎年、ほぼ自動的に積み上がっていくわけです。

「でも車は個人で使うことも多いんだけど」という方へ

ここで多くの社長が気になるのが、「プライベートでも使っているんだけど大丈夫?」という点です。

結論から言うと、法人名義にするだけで即アウトというわけではありません。ただし、使用実態の管理がとても重要になります。

税務調査で問題になりやすいのは、「名義だけ法人で実態は社長の個人使用」というケースです。休日に家族でドライブ、子どもの送り迎え、旅行先への移動——そういった用途が多い場合、調査官から「これは実質的に役員給与では?」と指摘されることがあります。

実務上は、業務使用と私的使用の割合を合理的に按分して、私的利用分を役員給与として計上する方法が取られることもあります。いずれにせよ、「なぜこの割合なのか」を説明できる記録を残しておくことが大切です。

走行記録がすべてを守る

社用車節税において、最大のリスクヘッジは走行記録の管理です。

日付、訪問先、目的、走行距離——これを記録し続けることが、税務調査での最強の防御になります。手書きの台帳でも構いませんし、最近はスマートフォンのアプリで自動記録できるものもあります。

「そんな面倒なことをしなければいけないの?」と思うかもしれませんが、年間15万円以上の節税効果を考えれば、月に数分の記録作業は十分に割に合います。そして何より、記録をつけているかどうかで、万一の調査時の結果が大きく変わります。

新車購入か、今ある車の名義変更か

今後の車の取得を法人名義にするのはもちろん、現在個人名義で使っている車を法人に売却・名義変更するという選択肢もあります。

ただしこの場合、適正な売買価格での取引が必要です。「1円で売った」「ただで譲った」という話はよく聞きますが、時価より著しく低い価格での取引は、差額が役員給与とみなされるリスクがあります。中古車査定などを参考に、合理的な価格で売買することをおすすめします。

また、個人ローンが残っている場合は名義変更が複雑になりますので、その点も確認が必要です。

今期に動くべき理由

社用車節税の恩恵は、早く始めるほど大きくなります。年間50万円以上の経費化が可能なら、5年で250万円、10年で500万円の損金が積み上がる計算です。

「決算前だからそろそろ何か節税策を」と考えているなら、社用車の名義を確認するところから始めてみてください。意外と見落としている会社さんが多いテーマです。

顧問税理士と相談しながら、使用実態に合った運用設計をするのが一番です。記録の仕組みさえ整えてしまえば、あとは毎年自動的に節税効果が積み上がっていきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。