「自社株の評価額が8億円と出たんですが、これ、子供に渡したら相続税はいくらになりますか?」

先日、創業28年の金属加工メーカーを経営する社長から、そんな相談を受けました。試算してみると、相続税はおよそ3億円。「会社を守るために稼いだお金なのに、死んだだけで3億円消えるのか」と、社長は絶句していました。

多くの中小企業オーナーが、このまま対策なく相続を迎えています。でも、正しいスキームを早めに組めば、この税負担をゼロに近づけることは十分可能です。今日は、現実的に使える3つの手法をご紹介します。

第3位:2024年改正で使いやすくなった相続時精算課税

まず知っておきたいのが、2024年に大きく改正された「相続時精算課税制度」です。

この制度は以前、生前贈与した財産をまるごと相続財産に組み込んで計算するため、「節税になりにくい」と敬遠されていました。ところが2024年の改正で、年間110万円の基礎控除が新設されました。

ここが重要です。この110万円の枠内で渡した財産は、相続財産への加算対象から外れます。毎年コツコツと自社株を子に贈与していけば、その分だけ確実に相続財産を圧縮できます。

即効性は高くありませんが、早く始めるほど効果は大きくなります。まだ手をつけていないなら、今期の贈与から始めてみてください。

第2位:贈与前に株価を下げる「評価圧縮スキーム」

高い株価のまま渡せば税金も高くなる。ならば、渡す前に評価額を下げてしまえばいい——それが評価圧縮スキームの考え方です。

代表的な手法が「持株会社の設立」です。オーナーが持株会社を設立して自社株を移転すると、持株会社の評価には一定の割引が適用されます。設計によっては、評価額が3〜4割下がることもあります。

もうひとつが「類似業種比準価額」の活用です。非上場株の評価には上場企業の株価を参考にする方法が使えますが、この評価は配当・利益・純資産の3要素で構成されています。役員報酬の設定や配当政策を適切に見直すことで、合法的に評価を引き下げられます。

実際に8億円あった評価額が2億円台まで下がったケースも珍しくありません。ただし税理士との緻密な設計が大前提で、素人判断で動くと逆に問題が生じることもあります。

第1位:実質ゼロが可能な「特例事業承継税制」

そして最も強力な対策が、事業承継税制の「特例措置」です。

要件を満たせば、自社株にかかる相続税・贈与税が最大100%猶予されます。つまり、実質ゼロで渡せる可能性があります。通常の猶予制度と違い、この特例措置は猶予割合が100%、対象株式数も無制限という異例の内容です。

問題は期限です。この特例措置は2027年12月31日に終了します。あと1年半ほど。興味があるなら、今すぐ動き出す必要があります。

注意点として、あくまでも「猶予」であって「免除」ではありません。後継者が株を売却したり廃業したりすると、猶予されていた税金に利子をつけて一括納付しなければなりません。会社を継続して経営し続けることが前提条件です。

3つを組み合わせるのが現実解

これら3つの手法は、どれかひとつを選ぶというより、組み合わせて使うのが実務では一般的です。

たとえば、まず評価圧縮スキームで株価を引き下げ、特例事業承継税制で大部分を猶予、残りは相続時精算課税で少しずつ移転——という複合戦略を取る会社も少なくありません。

ひとつだけ覚えておいてほしいことがあります。「うちはまだ先の話」と思っているうちに、2027年12月は来ます。特例事業承継税制は延長される保証がありません。今の自社株の評価額を把握して、どのスキームが使えるか確認するだけでも、数千万円から数億円単位の差が生まれることがあります。

まずは税理士に「うちの株価はいくらか、特例は使えるか」の2点を聞くところから始めてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。