先日、決算直前の社長からこんな話を聞きました。「そういえば、自分の車の維持費ってずっと個人で払ってるんですよね。年間で100万円くらい使ってると思うんですが……」。

その瞬間、「これはかなりもったいない」と思いました。個人名義のまま乗り続けることで、毎年30万円以上を余分に払い続けているかもしれないからです。

法人名義にすると、これだけが経費になる

車を法人名義で購入すると、次のコストが丸ごと法人の経費として計上できます。

  • 車両本体の減価償却費(法定耐用年数で分割して計上)
  • 自動車税・重量税
  • 任意保険・自賠責保険料
  • ガソリン代・高速道路料金
  • 車検・修理・メンテナンス費用
  • 業務で使う駐車場代

これらを合算すると、500万円台の車では年間100万円を超えることも珍しくありません。

数字で見る、節税効果の実感

具体的に計算してみましょう。

500万円の車を法人名義で購入した場合、普通乗用車の法定耐用年数は6年なので、定額法なら毎年約83万円の減価償却費が発生します。これに自動車税(年4〜5万円)、任意保険(年10〜20万円)、ガソリン代やメンテナンス費(年15〜25万円)を加えると、初年度の経費は軽く100万円を超えることもあります。

仮に年間の経費計上額が100万円だとすると、中小企業の法人実効税率(約33%前後)で計算すれば、年33万円の節税効果が生まれます。

個人で払う場合、その100万円は役員報酬として受け取った後に支払います。所得税・住民税・社会保険料がすでに引かれた後のお金で払うわけですから、実質的なコストはさらに割増になっています。10年間乗り続けると仮定すれば、累計で数百万円単位の差になることも珍しくありません。

「形だけの法人名義」は否認される

ここで注意が必要です。法人名義にすれば自動的に全額経費、というわけではありません。業務使用の実態があることが大前提です。

税務調査で否認されるケースの多くは、実態の確認ができないケースです。使用実態が業務と私用の両方にわたる場合は、業務使用割合に応じた按分が必要になります。「営業と通勤に使っています」と説明しても、記録がなければ税務署は簡単には納得しません。

実務的には、日付・行き先・走行距離・業務目的を記録した走行記録簿を月次で管理しておくことが求められます。難しいことはなく、手書きのメモやスプレッドシートで十分ですが、これが抜けていると指摘を受けやすくなります。

週末の家族旅行にも使っているのに「100%業務使用」と申告するのは論外です。実態に合った按分割合で申告することが、長く安全に節税を続けるための基本です。

中古車を使った節税パターン

節税効果をさらに高めたい場合、耐用年数が短い中古車を活用する方法もあります。

法定耐用年数を経過した中古車は、計算上の耐用年数が最短2年になります。つまり200万円の中古車を購入すれば、2年間で100万円ずつ経費化できる計算です。利益が出た年度に短期間で大きな減価償却を計上できるため、決算対策として活用されることがあります。

ただし、節税だけを目的に不要な車を購入するのは本末転倒です。手元の現金が減ることを忘れずに、あくまで「必要な車を選ぶときの参考」として検討してください。

今期中に確認しておきたいこと

社長の車がまだ個人名義のまま、という方は、今期の決算前に一度見直してみてください。

すでに個人名義で乗っている車を法人に売却して名義変更することも可能ですが、その際の譲渡価格の設定や税務処理には細心の注意が必要です。リースという選択肢も、経費化という観点では同様の効果が得られます。

どの方法が自社にとって最善かは、現在の利益水準・資金繰り・役員報酬の設計によって変わります。顧問の税理士に「社長車の法人経費化をシミュレーションしてほしい」と一言伝えるだけで、具体的な数字が見えてきます。年間30万円以上の差が出るかもしれないと思えば、確認しない理由はないはずです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。