先日、顧問先の社長からこんな話を聞きました。「車検のたびに十数万かかるし、保険も自腹、ガソリンも全部個人持ちで…」\n\nその社長、年商3億円の建設業で、毎日営業先をドライブしています。なのに乗っているのは個人名義の車。年間のコストを計算してみたら、軽く100万円を超えていました。\n\n「それ、全部会社の経費にできますよ」と話すと、目を丸くしていました。\n\n## 個人名義の車は、税金の”ブラックホール”\n\n個人名義のまま車に乗っている限り、どれだけ仕事で使っても、車にかかる費用は基本的にプライベート支出として扱われます。\n\n自動車税、任意保険、ガソリン代、車検費用——これらがすべて「自分のお金」から出ていく構造です。\n\n仮に年間100万円のコストがかかっているとしたら、それはすべて税引き後の手取りから支払われているということ。法人税や所得税を払った後のお金で車を維持しているわけです。\n\nこれを知っているかどうかだけで、5年後に大きな差が生まれます。\n\n## 法人名義に変えると何が経費になるのか\n\n法人名義に変えると、車に関わるほぼすべての費用が会社の経費として計上できるようになります。\n\n- 自動車税(毎年5〜10万円前後)\n- 任意保険料(年10〜20万円)\n- ガソリン代(月1〜3万円)\n- 車検費用(2年に1回、10〜20万円)\n- 駐車場代(事業に関連する場合)\n- ローンの利息(ローン購入の場合)\n\nこれらが経費になると課税所得が下がり、法人税・地方税を合わせた実効税率(中小企業で約25〜30%)分だけ税負担が軽くなります。\n\n年間100万円の車関連コストがあれば、単純計算で年30万円前後の節税効果。5年間積み上げれば150万円を超える差になります。利益が出ている会社ほど、この差は大きくなります。\n\n## 「すでに個人で買った車」はどうすればいいか\n\nよくある質問が、「もう個人で買って乗っているんだけど…」というケースです。その場合、主に2つの方法があります。\n\n① 会社が個人から買い取る\n適正な時価で個人から会社へ売却します。会社側は固定資産として計上し、減価償却も経費にできます。個人側は原則として譲渡所得が発生しますが、生活用動産として非課税になるケースも多いです(詳細は税理士へ)。\n\n② 次の購入時に最初から法人名義で契約する\nこれが一番シンプルです。次の車は最初から会社名義で買う。それだけで、以降のすべての維持コストが経費になります。\n\nどちらを選ぶかは車の取得価額や会社の状況によって変わるので、一度税理士と確認しながら進めるのが安心です。\n\n## 「按分」だけは絶対に押さえておく\n\nここで一点、見落としやすい注意点があります。\n\n法人名義の車でも、プライベートでも使っている場合は「業務使用分だけ」が経費になります。これを「按分(あんぶん)」といいます。\n\n税務調査が来たときに「本当に業務で使っていますか?」と問われたとき、証拠になるのが**運行記録(車両運行日誌)**です。日付・行き先・走行距離・目的をメモするだけ。難しくはないのですが、やっていない会社が意外と多いのが実情です。\n\n「社長専用車」でも、実態としてほぼプライベート利用であれば、その分は経費にできません。実態に即した運用が前提になります。\n\n## 引退前に「出口」も考えておく\n\nもう少し先の話になりますが、法人名義で車を所有している場合、将来会社を売却したり引退するときに「この車をどう処理するか」が課題になることがあります。\n\n法人の資産として残っていれば、事業承継や売却の際に評価額に含まれます。経営者が引退前に適正な価格で個人に譲渡するという選択肢もあります。\n\n車は金額が大きい割に見落とされがちな資産です。出口のことも、早めに頭に入れておいてほしい視点のひとつです。\n\n## 今すぐ確認してほしいこと\n\n今、個人名義の車で毎日仕事をしているなら、まずこの3点を確認してみてください。\n\n- 年間の車関連コストの合計(税・保険・ガソリン・車検)\n- 会社の利益が出ているか(出ているほど節税効果が大きい)\n- 次の車検や購入のタイミングはいつか\n\nタイミングよく動ければ、今期から経費化できます。個人名義のまま乗り続けるということは、毎年数十万円を捨て続けているのと同じかもしれません。決算前に一度、税理士に相談してみることをおすすめします。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。
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