先日、ある製造業の社長からこんな言葉をもらいました。「税理士から事業承継の話は聞いているんですが、何をどこから始めればいいか、正直よくわからないんですよね」。

事業承継は「いつかやろう」では取り返しがつかない話です。特に2027年という大きな期限が迫っている今、まだ動けていない社長は本当に多い。今回は、私が顧問先の社長によくお伝えする「今すぐやるべきこと」を3つ、優先順に解説します。

第3位:自社株の評価額を、今すぐ数字で把握する

意外と多いのが「自分の会社の株価を知らない」という社長です。上場企業ではないから株価なんてない、と思っているケースもありますが、非上場の自社株にも「評価額」はあります。

業績が上がるほど、この評価額も上昇します。利益が出ている会社は株価が高くなる——これは一見いいことのように聞こえますが、相続税・贈与税の観点では「課税対象の財産が膨らむ」ことを意味します。

たとえば今は評価額が2億円でも、5年後に業績が伸びれば5億円に跳ね上がることもある。何も対策しないまま放置すると、いざ相続が発生したときに多額の税金が子どもにのしかかります。

まずは顧問税理士に「うちの株、今いくらですか?」と聞いてみてください。この一言が、事業承継対策のすべての出発点です。

第2位:暦年贈与を、今日から始める

「暦年贈与」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。毎年110万円まで贈与税がかからない非課税枠を使って、少しずつ財産を後継者に移転していく方法です。

ただ、2024年から税制が変わりました。以前は亡くなる前3年以内の贈与が相続財産に持ち戻されていましたが、改正によってこの期間が段階的に7年へと延長されています。

これが何を意味するかというと、「早く始めるほど得をする」という構造がさらに強まったということです。7年より前に贈与した分は相続財産に戻されない。だから、一日でも早く動き始めることが有利なのです。

毎年110万円、10年続けると1,100万円を非課税で移転できます。「まだ先の話」と思っているうちに、使えたはずの非課税枠がどんどん消えていきます。50代の社長なら今すぐ、60代ならなおさら急ぐべきタイミングです。

第1位:事業承継税制の「2027年12月末」という期限を今すぐ確認する

これが最も重要です。

「事業承継税制(特例措置)」とは、後継者が自社株を相続・贈与で取得したとき、本来かかるはずの相続税・贈与税が猶予される制度です。要件を満たせば、実質的に納税が免除される可能性もある、非常に強力な制度です。

この特例措置には、適用を受けるための手続き期限があります。現行では2027年12月31日が一つの大きな区切りになっています。

ここで注意してほしいのが、「2027年に手続きすればいい」という誤解です。都道府県への特例承継計画の提出、税務署への申告、後継者への株式の移転——これらを段階的に進める必要があり、余裕を持って動かないと間に合いません。今から動き始めても、全工程が完了するまでに2〜3年かかるケースは珍しくない。つまり今が「ギリギリ間に合うタイミング」かもしれないのです。


事業承継は、後回しにするほどコストが上がります。自社株の評価額は業績とともに上がり、使える非課税枠は時間とともに減り、制度の適用期限は確実に近づいています。

まずは顧問の税理士に「うちの事業承継、今どのステップにいますか?」と一言かけてみてください。今動いているかどうかが、10年後の手残りを大きく変えます。動き出すなら、今です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。