「最近、税制改正の話をよく聞くけど、うちには関係ないかな」——年明け早々、こんな言葉で相談してきた社長がいました。年商4億の卸売業を営む60代の方で、事業承継も視野に入れているというタイミング。話を聞いてみると、2026年の改正内容をほとんど把握していません。「損をしているわけじゃないから大丈夫」とおっしゃるのですが、実はそこが落とし穴なんです。
税制改正は、知っている社長と知らない社長で、同じ売上・同じ利益でも手元に残るお金が大きく変わります。今年はとくにその差が顕著で、「今期中に動いた社長」と「来期まで放置した社長」の間に、数千万円規模の開きが生まれる可能性があります。
今日は、2026年の改正で得をする社長を3タイプに絞ってお伝えします。
3位:賃上げを武器にする社長
人材確保のために賃上げを検討している社長には、朗報があります。賃上げ促進税制の拡充です。
前年比1.5%以上の賃上げを実施した企業に対して、給与増加額の最大45%を法人税から直接控除できる仕組みになっています。「控除」というのがポイントで、税額そのものが減る、非常に強力な節税策です。
たとえば年間の給与総額が1億円で、昨年より200万円増やした場合——その200万円の45%、つまり最大90万円が法人税から差し引けます。社員のためになり、かつ法人税も減る。経営者にとってこれほどありがたい制度はそうありません。
ただし、適用できるのは2027年3月末まで。今期の賃上げ計画をすでに持っているなら、この制度を使えるよう今すぐ顧問税理士に確認しておくことをおすすめします。
2位:後継者へ株を渡す前に動いた社長
後継者への事業承継を考えている社長には、絶対に見逃せない制度があります。事業承継税制の特例措置です。
本来、自社株を後継者に贈与・相続すると、評価額によっては数千万円から億単位の税金が発生することがあります。しかしこの特例を使えば、贈与税・相続税が最大100%猶予されます。後継者が一定期間事業を継続すれば最終的に免除に転じるため、多くの案件では実質ゼロで株を渡せることになります。
ただし、この特例の適用期限は2027年12月末。残り約2年です。申請には事前に特例承継計画を策定して都道府県へ提出する必要があり、「来年から動こう」では間に合わないケースも出てきます。
「まだ先の話」と思っている社長ほど、今すぐ専門家への相談をスタートさせてください。準備に想像以上の時間がかかることが多いのが、事業承継の現実です。
1位:2026年中に自社株を動かした社長
3つの中でもっともインパクトが大きいのが、これです。2026年は、自社株の評価が低くなりやすい条件が揃う可能性があります。
自社株の評価方法のひとつ、類似業種比準価額方式では、上場企業の株価や配当・利益・純資産をもとに評価額が算出されます。株式市場の動向が影響するため、評価が低くなる年とそうでない年があります。評価が低い年に株を後継者へ移転した社長は、来年以降に動いた社長と比べて、数千万円規模で納税額が変わる可能性があります。
「自社株の評価なんて関係ない」と思っている社長も多いのですが、年商数億円規模の非上場企業であれば、自社株の評価は億を超えることも珍しくありません。評価が2割変わるだけで、贈与税・相続税の計算が大きく動きます。
評価の低いうちに株を動かすのは、税務上も認められた合法的な節税策です。手続きには税理士・司法書士との連携が必要ですが、今期中に動き始めれば間に合う社長は多いはず。詳しくは必ず専門家に確認してください。
今すぐ動ける社長だけが得をする
3つに共通しているのは「期限がある」ということです。賃上げ促進税制は2027年3月末、事業承継税制の特例は2027年12月末、自社株移転の好機は2026年という年内。知っているだけでは意味がなく、行動が伴わなければ恩恵はゼロです。
どの施策から手をつけるべきかは、決算期や事業の状況によって異なります。まずは顧問税理士に「2026年改正で自社が使える制度があるか」と一言聞いてみてください。その一言が、数千万円の差を生むかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。