先日、ある製造業の社長からこんな一言が届きました。「そういえば、うちの会社って事業承継の計画って出してたっけ?」という、なんとも緊張感のないメッセージでした。

すぐに顧問税理士に確認してもらったところ、幸い提出済みで事なきを得ました。でも、もしこれが1ヶ月前の話だったとしても間に合わなかった——というか、2026年3月31日という日付が、事業承継を考えるすべての社長にとってひとつの分岐点になっていたんです。

特例措置と一般措置、その差はどれだけ大きいか

事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の2種類があります。どちらも後継者が自社株を相続・贈与で受け取るときの税金を猶予してくれる制度ですが、内容に大きな差があります。

一般措置の場合、猶予される株式は発行済み議決権株式の3分の2までです。残りの3分の1にはしっかり相続税がかかってきます。一方、特例措置では発行済み議決権株式の全てが猶予対象になります。

会社の株価が高くなっているケースでは、この差が何千万円、場合によっては数億円単位になることもあります。それだけ有利な制度が、「計画を出したかどうか」という一点で使えるかどうかが決まってしまったわけです。

「今から申請できますか?」という問いへの答え

残念ながら、特例承継計画の都道府県知事への提出期限は2026年3月31日で終了しています。今この記事を読んでいる方が新たに特例の申請をすることは、もうできません。

ただし、まだチャンスのある方がいます。それは期限内に計画を提出済みの方です。

特例承継計画を提出することと、実際に贈与・相続を実行して税制を適用することは別のステップです。実行のための期限は2027年12月31日まで残っています。計画を出していた方には、あと1年半以上の猶予があります。

今すぐ確認すべきことはただひとつ、「うちは計画を出しているか?」です。

提出済みの方がやるべきこと

計画を提出済みだと確認できたなら、次は実行に向けた段取りです。

2027年12月末という期限は一見余裕があるように見えますが、自社株の評価、後継者への贈与設計、税務申告の準備などを考えると、実務的には1年以内に動き始める必要があります。特に株価が高い会社や、後継者がまだ役員になっていないケースでは、整備すべき手続きが多いです。

顧問税理士と「いつ、どの形で実行するか」を早めに詰めておくことをおすすめします。

計画を出していなかった場合はどうなるか

「特例が使えないなら一般措置で」という話になりますが、一般措置でも事業承継税制は使えます。株式の3分の2までという上限はありますが、その分の税金を猶予してもらえることに変わりはありません。

問題になるのは、株価が高い会社の場合です。残りの3分の1に重い相続税がかかってくると、「一般措置では対応しきれない」という状況になることもあります。

そうなると、持株会社の設立や組織再編を活用した株価引き下げ、あるいはM&Aを含めた事業承継の再設計が必要になってきます。選択肢がないわけではありませんが、時間と費用がかかることは覚悟しておく必要があります。

「確認する」だけでいい、今日のうちに

事業承継は「そのうち考えればいい」と後回しにされがちなテーマです。でも今回の特例申請期限のように、ある日突然「もう間に合わない」という状況が訪れます。

今日やってほしいことはシンプルです。顧問税理士に「特例承継計画は提出済みですか?」と聞いてみてください。それだけで今後の対応が変わります。

提出済みなら2027年12月末に向けて実行の段取りを。提出していないなら、一般措置や他の手法を含めた選択肢を冷静に検討する。焦っても期限は戻ってきませんが、今からでも取れる手はあります。現状を正確に把握するところから始めましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。