先日、ある社長からこんな話を聞きました。「取引先の社長が引退するとき、退職金が1億円を超えたらしいんですよ。うちも同じくらいの規模なのに、どうしたらそうなれるんでしょうか」と。\n\nその質問、実はとても本質を突いています。退職金の金額は、引退時の判断だけで決まるわけではありません。何年もかけて積み上げてきた”準備の差”が、最後に一気に表れるのです。\n\n## 第3位:退職金規程が「使える状態」で整備されている\n\n「うちは役員退職金規程、作ってあります」と言う社長は少なくありません。でも中身を確認してみると、「役員退職金は取締役会の決議による」とだけ書いてある、形だけの規程だったりします。\n\nこれは危険です。税務調査では「損金算入の根拠」が厳しく問われます。計算根拠が規程に明記されていなければ、支払った退職金が「役員への利益分配」とみなされ、損金算入を否認されるケースがあります。会社はお金を出したのに、税務上は経費にならないという最悪の結果です。\n\n規程には「最終月額報酬×在任年数×功績倍率」という算定式を明記し、功績倍率の上限(代表取締役は最大3倍など)も具体的に定めておく必要があります。規程があることに安心するのではなく、「税務調査で使える規程か」を今一度確認してみてください。\n\n## 第2位:現役時代の報酬を計画的に設計している\n\n退職金の計算式はシンプルです。最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率。功績倍率は代表取締役なら2〜3倍が一般的ですから、退職金の額を左右する変数は「報酬水準」と「在任年数」の2つだけ、と言っても過言ではありません。\n\n具体的に計算してみましょう。月額報酬100万円×在任30年×功績倍率3倍=9,000万円。逆に月額50万円なら、同じ条件でも4,500万円。倍近く変わります。\n\n「報酬を上げると所得税が増える」のはその通りです。ただし、退職金として受け取るときの税負担は、現役時代の給与所得と比べて圧倒的に軽くなります。このトレードオフを長期的な視点で設計してきた経営者が、引退時に大きな退職金を手にしているのです。報酬を「今期の損得」だけで判断するのはもったいない。\n\n## 第1位:在任期間が20年を超えている\n\nこれが最も大きな差になるポイントです。\n\n退職金には「退職所得控除」という非常に強力な控除があります。勤続20年以下では1年あたり40万円ですが、20年を超えると1年あたり70万円に跳ね上がります。在任30年なら、40万円×20年+70万円×10年=1,500万円もの控除が使えます。\n\nさらに、退職所得の課税対象は「(退職金−控除額)の半分」です。退職金9,000万円・控除1,500万円の場合、課税対象は(9,000万円−1,500万円)÷2=3,750万円。9,000万円受け取っても、税金がかかるのはその4割程度に過ぎません。これは給与や事業所得にはない、退職金だけの特権です。\n\n在任期間が短い段階でいくら退職金を積み上げようとしても、この恩恵だけは時間を巻き戻さないと手に入りません。「長く続けること」自体が節税戦略になっているのです。\n\n## 3つに共通するのは「早く始めた人が得をする」こと\n\n退職金規程の整備、報酬設計、在任期間。どれも引退直前に手を打っても遅いものばかりです。退職金が思ったより少なかった経営者のほとんどが、「もっと早く考えておけばよかった」と後悔されています。\n\n今の段階でどれくらいの退職金が見込めるのか、自社の規程は税務調査に耐えられる内容か、報酬水準を見直すべきタイミングか——これらを一度、具体的な数字で確認しておくことをおすすめします。まだ先の話だと思っているなら、それが一番もったいない時間の使い方かもしれません。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。