先日、ある製造業のオーナー社長から「退職金を5000万円用意したんだけど、一番損しない受け取り方ってどれですか?」と相談を受けました。

「とにかく一括でもらえばいいんじゃ?」と直感的に思う方も多いのですが、実は受け取り方次第で手取りが数百万円、場合によっては1000万円以上変わってきます。今日は手取りが多い順に、ランキング形式でご紹介します。

3位:年金型(分割受取)——安心感の裏に潜む重税

「毎月少しずつもらえるから安心」という理由で年金型を選ぶ社長は少なくありません。気持ちはよくわかります。でも、この方法には大きな落とし穴があります。

年金型(分割受取)で受け取ると、退職金ではなく「雑所得」として毎年課税されてしまいます。退職所得として一括受取すれば使えるはずの優遇税制が、年金型では一切使えないのです。

給与や他の所得と合算して累進課税が適用されるため、所得が多い年ほど税率が跳ね上がります。最高税率55%(所得税45%+住民税10%)がかかるケースも十分あり得ます。5000万円の退職金が、受け取り方の選択ひとつで実質2000万円台になってしまうこともある——それが年金型の現実です。

2位:一括受取——退職所得の優遇税制をフル活用

一括受取の最大のメリットは、「退職所得控除」と「2分の1課税」という、給与にはない特別な優遇税制を使えることです。

退職所得控除は、長年の勤続を労う意味で設けられた非課税枠です。勤続20年を超えた分については1年ごとに70万円の控除が加算されていきます。

勤続30年の社長が5000万円を一括受取した場合を見てみましょう。控除額は800万円+70万円×10年=1500万円。退職金からこれを差し引いた3500万円に、さらに2分の1をかけた1750万円が課税対象です。

この課税対象1750万円に対する税額はおよそ600万円。実効税率は約12%です。同額を給与として受け取れば2000万円を超える税負担になります。一括受取の選択だけで、1400万円以上の節税になるわけです。

1位:一括受取×長期在籍の設計——手取り最大化の勝ちパターン

1位と2位の違いは「在籍年数をどれだけ設計に組み込んでいるか」です。

勤続年数が長くなるほど退職所得控除の額も増えるため、退職のタイミングを数年ずらすだけで大きな差が生まれます。勤続35年の場合、控除額は800万円+70万円×15年=1850万円。30年の場合と比べて350万円多く控除できます。

課税対象額が350万円少なくなれば、その半分の175万円が課税ベースから消え、税負担も数十万円単位で減ります。「たった5年の差で、こんなに変わるんですか」と驚く社長は多いです。

さらに踏み込むと、役員就任のタイミングや家族役員の退職金と組み合わせてどう設計するかまで考えると、戦略の幅はさらに広がります。在籍年数だけでなく、「いつ・いくらを・どの役員に」という全体設計が、最終的な手取り額を決めるのです。


退職金5000万円は、受け取り方の設計次第でその多くが手元に残るかどうかが決まります。「まだ先のこと」と思っているうちに、選択肢が一つひとつ消えていきます。

特に勤続年数は後から増やすことができません。今期の決算が終わったタイミングで一度、「いつ・どのように退職金を受け取るか」を税理士と具体的に話し合ってみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。