先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。お父様が急に倒れ、会社の株式を相続することになったのですが、「税理士に試算してもらったら、想定の3倍の相続税が出てきた」とおっしゃっていたんです。
幸い、最終的には資金調達でなんとか乗り越えられましたが、もし準備が半年遅れていたら、70年続いた会社を手放すことになっていたかもしれません。
実は、相続をきっかけに会社を潰してしまう社長には、共通のパターンがあります。「うちは大丈夫」と思っている方ほど、一度確認しておいてほしい話です。
第3位:自社株の評価額を知らなかった
「うちの株なんて、大した価値ないよ」——そう思っている社長が、実は一番危ない。
帳簿上の価格が1億円であっても、相続税の評価では「純資産価額方式」や「類似業種比準価額方式」という計算方法が使われます。特に内部留保が厚い会社や、毎年しっかり利益が出ている会社は、帳簿価格の3〜5倍の評価額が出ることも珍しくありません。
帳簿上1億円の株式が、相続税の計算では3億〜5億円の財産として扱われる——そこに法定相続分に応じた税率がかかると、あっという間に数千万円〜1億円超の税負担が生じます。
「そんな現金、どこにあるの?」という話になるのは、容易に想像できますよね。
第2位:納税資金を用意していなかった
相続税には、意外と知られていない厳しいルールがあります。相続税は原則として相続発生から10ヶ月以内に、現金一括で納付しなければなりません。
分割払い(延納)や物納の制度もありますが、要件が厳しく、簡単には認められません。「後で払います」が通じない税金なんです。
特に問題になるのが、「財産のほとんどが自社株だけ」というケース。自社株は現金化しにくい財産の代表格で、売れる相手も限られていますし、上場株式のようにすぐ換金できるわけでもありません。
結果として、「税金を払うために会社を売るか、解散するか」という究極の選択を迫られる社長が実際にいます。創業者が一代で築いた会社が、相続をきっかけに幕を閉じる——これは決して他人事ではありません。
第1位:対策を先送りにした
「まだ元気だから、相続のことは後でいいや」
これが最も多く、そして最も取り返しのつかない落とし穴です。
事業承継税制には「特例措置」という制度があり、要件を満たせば自社株の相続税・贈与税を実質ゼロにすることが可能です。しかしこの特例措置、申請期限は2027年12月31日までと決まっています。
さらに重要なのは、「申請すればいい」だけでなく、生前に着実に自社株を後継者へ移転しておくほど税負担が大幅に下がるという点です。計画的に移転するには、最低でも5〜10年のスパンが理想とされています。
「2027年まであると思っていたら、気づいたら1年を切っていた」——そういう社長が毎年増えています。税理士との相談、計画策定、実際の手続きと、やるべきことは山積みです。今から動き始めても、決して早くはありません。
共通点は「数字で把握していなかった」こと
第3位から第1位まで振り返ると、共通しているのは「自社の状況を正確な数字で把握していなかった」という点です。
自社株の評価額も、納税資金の準備状況も、特例措置の期限も——「なんとなくわかっている」ではなく、「具体的な数字で把握する」ことが第一歩です。
まず自社株の評価額を税理士に試算してもらうだけでも、危機意識はまるで変わります。「相続が発生したら、うちはいくら税金がかかるのか」をまだ試算したことがないなら、今期中に一度確認しておくことを強くおすすめします。2027年の期限まで、残り時間はそれほど多くありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。