先日、資産総額が5億円を超えるという建設会社の社長から、こんな質問を受けました。

「毎年110万円を子どもに振り込んでいるんだけど、それだけでいいの?もっと効果的な方法があるなら早めに手を打ちたい」

一口に「生前贈与」といっても、使う制度によって節税効果は数百万円単位で変わります。今回は、相続前にやっておいてよかったと社長から声をいただく生前贈与を、効果の高い順にご紹介します。

3位:暦年贈与——定番だけど、もうのんびりしてはいられない

年間110万円まで贈与税がかからないのが「暦年贈与」です。子ども2人に毎年贈れば、10年で2,200万円を相続財産から減らせます。相続税の実効税率が30〜40%なら、それだけで660〜880万円の節税です。

ただし、2024年の税制改正で注意点が増えました。これまで「相続前3年以内の贈与は相続財産に加算」という規定でしたが、改正後は相続前7年以内に延長されています。

「70歳になってから始めよう」と考えていると、亡くなるタイミング次第では贈与の効果がほとんど出ない可能性もあります。暦年贈与は「今すぐ始めること」が最大のポイント。50代から動けているかどうかで、最終的な節税額は数千万円単位で差がつきます。

2位:相続時精算課税——2024年から使いやすくなった「もう一つの選択肢」

相続時精算課税は、最大2,500万円まで一括で贈与できる制度です。以前は使いにくいとされていましたが、2024年から年間110万円の基礎控除が新設されたことで、使い勝手が大きく改善されました。

この制度が特に威力を発揮するのが、自社株の後継者への移転です。今の株価が3,000万円でも、事業が成長すれば10年後に1億円になるかもしれない。このタイミングで後継者に渡しておけば、将来の値上がり分まるごと相続税なしで移転できるわけです。

一点、注意が必要です。この制度を一度選ぶと暦年贈与には戻れません。どちらが有利かは資産構成や事業の状況によって異なるため、慎重に判断する必要があります。ただ、後継者に自社株を移転したいと考えているなら、一度は真剣に検討する価値があります。

1位:教育資金一括贈与——孫がいるなら絶対に見逃せない

1位は「教育資金の一括贈与」です。金融機関での専用口座を通じて、孫1人あたり最大1,500万円まで教育費を非課税で贈与できます。

特に効果的なのが、相続税の税率が高い資産家です。課税財産が多いほど税率が上がり、相続税率が45〜55%のゾーンに入っている方が孫1人に1,500万円を贈った場合、節税効果は最大で825万円にのぼります。孫が3人いれば、それだけで2,475万円です。

気をつけたいのは「教育費であること」という縛りがある点です。学校の授業料・塾代・留学費用などは対象になりますが、生活費全般には使えません。使われずに残った金額は相続財産に戻るケースもあるため、使途の管理が欠かせません。

それでも、高い相続税率の資産家にとっては、他の手段と比べてもダントツの削減効果があります。「孫がいるなら今すぐ動いてほしい」と本気で思っている制度のひとつです。

やり方よりも「始めるタイミング」が命

3つの制度に共通しているのは、「始めるのが早いほど効果が大きい」という点です。相続税は亡くなったときの財産額で計算されます。生前に渡せていれば課税されない、その原則は変わりません。

ただ、改正のたびに遡及される期間が延びる傾向があるため、先送りはリスクになります。まだ生前贈与を始めていない、あるいは暦年贈与しかやっていないという社長は、ご自身の財産構成と家族構成を整理して、一度税理士に相談してみることをおすすめします。「誰に・いくら・どの制度で」という設計が固まれば、あとは毎年コツコツ実行するだけです。動き出すのに、早すぎることはありません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。