先日、年商2億円の製造業の社長から、こんな一言が届きました。「3月末に何か大事な締め切りがあったって税理士に聞いたんですが、もう終わっていましたか?」——。\n\n確認してみると、少額減価償却特例の終了も、事業承継計画の提出期限も、どちらも3月末に終わっていました。気づいたときにはもう遅い。この社長のように、4月になってから「知らなかった」と焦るパターンが今年は特に多く起きています。\n\n2026年4月の税制改正は、表立って大きなニュースになりにくい変化ばかりです。だからこそ、知らないまま機会を逃す社長が出やすい。今回は影響が大きい3つのポイントを解説します。\n\n## 3位:少額減価償却特例が3月末で終了\n\n中小企業の節税の定番として長く使われてきた「少額減価償却特例」が、2026年3月末をもって終了しました。この特例は、30万円未満の備品・ソフトウェア・設備を購入した際に、その年に全額を経費として落とせる制度です。年間300万円を上限に、複数の備品を一括で費用化できました。\n\nたとえば25万円のパソコンを5台購入した場合。3月末までなら125万円をその年の経費に計上できましたが、4月以降は通常の耐用年数(4年)で減価償却するしかありません。同じ125万円を支払っても、初年度に費用化できるのは約31万円程度まで下がります。\n\n「決算前に設備投資をまとめて節税する」という定番の手法が、この特例の終了で使えなくなりました。設備投資のタイミング戦略は、以前より丁寧な計画が求められます。\n\n## 2位:事業承継税制の特例承継計画、提出期限終了\n\n経営者の世代交代を検討している方には、こちらのほうが深刻かもしれません。\n\n「事業承継税制の特例措置」は、後継者への自社株の承継に際し、贈与税・相続税を最大100%猶予できる制度です。条件を満たせば、実質的に税負担なしで株を移せる非常に強力な制度でした。\n\nただし、この特例を使うためには事前に「特例承継計画」を都道府県に提出しておく必要があります。その提出期限が2026年3月末に終了しています。\n\n未提出の会社は、以降この特例措置を利用できません。自社株の評価額が高い会社ほど、その影響は大きくなります。株価によっては数千万円から億単位の税負担が将来発生するリスクがあります。\n\n「承継はまだ先の話」と感じていた社長ほど、計画書の提出だけを後回しにしてきたケースが多い。計画書の提出は承継の「宣言」であって「実行」ではないのに、その区別がなかったのです。\n\n## 1位:暦年贈与の相続財産加算期間が7年に延長\n\n最も影響範囲が広く、かつ気づきにくいのがこの改正です。\n\n従来、亡くなる前の3年以内の贈与は相続財産に加算されるルールがありました。だから「3年前までに贈与しておけば相続財産から外れる」という対策が成立していました。\n\n法改正により、この加算期間が段階的に延長され、2031年以降の相続からは最大7年分が加算対象になります。\n\n毎年少しずつ自社株や預金を贈与して相続対策を進めてきた社長は要注意です。「暦年贈与で毎年110万円ずつ渡してきたから安心」と思っていた対策が、以前より多くの財産を相続財産に戻すことになります。\n\n具体的な影響額は相続財産の規模や贈与の時期によって大きく異なります。「自分のケースでは実際どのくらい変わるのか」を今すぐ専門家に確認することをおすすめします。\n\n## 4月以降でもできることがある\n\n3月の締め切りを逃したからといって、すべての手が尽きたわけではありません。\n\n少額減価償却特例は終了しましたが、中小企業投資促進税制や経営強化税制など、設備投資に関連する別の優遇制度は引き続き使えます。事業承継税制も、特例措置以外の「一般措置」は現在も利用可能です。暦年贈与については、相続時精算課税制度への切り替えや生命保険の活用など、代替手段は複数残っています。\n\n改正後のルールの中で最適な手を打つには、自社の現状と保有資産の全体像を把握した上で、専門家と一緒に戦略を組み直すことが必要です。まだ定期的な税務相談の仕組みを持っていないなら、今期中に整えることをおすすめします。法改正のたびに「知らなかった」が積み重なると、長い経営人生での機会損失は相当な額になります。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。
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