先日、ある社長からこんな相談を受けました。
「うちの会社、万が一のときの備えって、生命保険に入っているくらいで……それで十分ですよね?」
その社長、月の役員報酬は100万円、相続人は奥様とお子さん2人の3人。試算してみると、きちんと設計すれば5,000万円超が非課税になる可能性があったんです。でも、その枠をほぼ活かせていなかった。
これ、珍しい話ではありません。生命保険は手配しているのに、税務的な受け取り設計まで考えている会社は、本当に少ないんです。
死亡退職金の非課税枠、計算は単純です
社長が亡くなった際に会社から遺族へ支払われる「死亡退職金」には、相続税の非課税枠があります。
計算式はシンプルで、「500万円 × 法定相続人の数」。先ほどの社長のケースでは、相続人が3人なので 500万円 × 3 = 1,500万円が非課税になります。
これは多くの方がご存知の制度です。ただ、「じゃあ1,500万円ね」で終わっている会社が多い。実はもう一つ、あまり知られていない非課税枠があるんです。
「弔慰金」という、もう一つの非課税枠
弔慰金(ちょういきん)とは、会社が社員や役員の遺族に対して、弔意として支払うお金です。退職金とは別建てで支給できます。
そして、この弔慰金にも非課税枠があります。業務上の死亡(例:仕事中の病気や事故による死亡)であれば、月額報酬の36ヶ月分まで非課税。月額報酬が100万円の役員なら、3,600万円が丸ごと非課税の対象になります。
業務外の死亡(業務との因果関係がない場合)でも、月額報酬の6ヶ月分が非課税枠として認められています。月100万円なら600万円。これも決して小さくない金額です。
2つ合わせると、5,000万円を超えることも
先ほどの社長のケースで試算してみましょう。
- 死亡退職金の非課税枠:500万円 × 3人 = 1,500万円
- 弔慰金の非課税枠(業務上):100万円 × 36ヶ月 = 3,600万円
- 合計:5,100万円
5,000万円超が非課税になり得る、ということです。相続税率によっては、数百万〜1,000万円単位の節税効果が生まれます。
ほとんどの会社が「片方しか設計していない」
ここが問題の核心です。生命保険の受取人を遺族にして、死亡退職金の原資を用意している会社はあります。でも、弔慰金の枠を意識して別途設計している会社は、ほとんど見かけません。
弔慰金は退職金とは別に、会社の規程に基づいて支払うことができます。ただし、税務上の非課税扱いを受けるには、退職金と弔慰金を明確に区分して支給することが条件になります。混同した支給では、後から「全部退職金」と認定されるリスクがあります。
また、弔慰金の支給規程が事前に整備されていることも重要です。「亡くなった後に慌てて決めた」では、税務署に否認されることがあります。
生命保険の設計と一緒に見直すべき理由
死亡退職金・弔慰金の財源として、経営者保険(法人契約の生命保険)を活用するケースが多いです。保険金が会社に入り、それを退職金・弔慰金として遺族に支払う流れです。
そのため、保険の見直しをするタイミングで、同時に支給規程の整備と非課税枠の試算をしておくことを強くおすすめします。別々に考えると、せっかく保険で大きな保険金を用意したのに、税務設計が追いついていないという事態になりかねません。
今の会社の役員報酬と相続人の数で、一度シミュレーションをしてみてください。意外と大きな非課税枠が眠っているはずです。顧問税理士に「死亡退職金と弔慰金の設計、今のままで最適ですか?」と一度聞いてみるだけで、話が大きく動くことがあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。