先日、製造業を営む60代の社長からこんな相談を受けました。「息子への承継もひと段落したし、そういえば補助金って使えたんですかね?」——残念ながら、そのタイミングではもう申請できない状態でした。

事業承継・引継ぎ補助金は、うまく活用すれば最大600万円が手元に残る制度です。それなのに、知らなかった・動くのが遅かったという理由だけで受け取れなかった社長が、私の周りにも少なくありません。

今回は「使い損ねた社長に共通するパターン」を3つ紹介します。思い当たる節があれば、ぜひ今すぐ動いてみてください。

第3位:「そんな補助金があったの?」で終わる

まず一番多いのが、補助金の存在自体を知らないケースです。事業承継・引継ぎ補助金は、設備投資や業態転換のコスト、さらには弁護士・税理士・M&Aアドバイザーへの専門家費用にも使えます。

「補助金といえば製造業の設備投資向け」というイメージを持っている社長は多いのですが、この補助金はサービス業でも小売業でも幅広く対象になります。しかも専門家費用まで補助対象になるというのは、かなり太っ腹な制度です。

知らないまま承継を終えてしまうと、あとから「使えたかもしれない」と気づいても後の祭り。まずは存在を知ることが、すべての出発点です。

第2位:後継者が決まってから相談に来る

「後継者も決まったし、そろそろ補助金の話を聞こうかな」——このタイミングで動き始める社長が非常に多いのですが、実はこれが大きな落とし穴です。

事業承継・引継ぎ補助金には、承継前後の一定期間という申請要件があります。つまり、承継が完了してからだいぶ時間が経ってしまうと、そもそも申請の土俵にすら上がれないことがあるのです。

承継を「決めた段階」ではなく、「検討を始めた段階」で専門家に相談することが重要です。補助金のスケジュールは公募期間が決まっており、タイミングを逃すと次の公募まで待つことになります。準備に時間がかかるという点でも、早めに動くに越したことはありません。

第1位:「うちは親族内承継だから関係ない」と思い込む

これが最も多く、かつ最もモッタイナイパターンです。「M&Aや社外への承継じゃないし、どうせ対象外でしょ」と最初から諦めてしまっている社長が驚くほどいます。

しかし実際には、M&Aや親族外承継を検討しているケースにもしっかり対応しています。むしろ社外への承継を検討しているならば、積極的に活用できるケースが多いのです。

「誰に承継するか」をまだ決めていない段階であれば、選択肢を社外にも広げるだけで補助金の受給対象になる可能性があります。後継者問題に悩んでいるなら、それ自体がチャンスでもあります。

また、M&Aを活用した第三者承継は、廃業コストの削減や従業員の雇用維持という面でもメリットが多く、補助金を入り口に真剣に検討してみる価値があります。

動くなら「今期中」がひとつの目安

この補助金、公募のタイミングは年に複数回あります。ただし、申請書類の準備や事業計画の策定には一定の時間がかかります。「今年中に承継を進めたい」と考えているなら、遅くとも半年前には動き始めるくらいの感覚でいてください。

具体的な申請要件や補助率、上限額は公募回ごとに変わることがあります。自分のケースが対象になるかどうかは、中小企業庁のサイトや事業承継・引継ぎ支援センター、あるいは顧問の税理士・M&Aアドバイザーに確認するのが一番確実です。

「うちには関係ない」と思っていた社長ほど、実は対象になっていたというケースが多いのがこの補助金の特徴です。まだ承継について本格的に動いていないなら、今期中に一度、専門家に相談してみることをおすすめします。600万円を見逃すかどうか、その差はたった一本の電話かもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。