毎年6月になると、市区町村から一通の封筒が届きます。住民税の決定通知書です。
「今年もこんなに取られるのか」と思いながら金額だけ確認して引き出しにしまう——そんな社長さん、実は少なくありません。ところが先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。
「去年の通知書、例年より50万円くらい高い気がするんですが、何かおかしいですかね?」
調べてみると、前年に役員へ退職金を支給した際の処理に漏れがあり、さらに家族の医療費控除も申告していないことがわかりました。更正の請求を活用した結果、住民税と所得税を合わせて90万円超の還付を受けることができました。
住民税が「高すぎる」状態はなぜ起きるのか
住民税は前年1月〜12月の所得をもとに計算されます。だから6月に届く通知書は、昨年の確定申告内容がそのまま反映されます。
確定申告のときに控除を漏らしていると、その分だけ課税所得が膨らんでしまいます。社長が見落としやすい控除には次のようなものがあります。
- 医療費控除:年間10万円超(所得次第では5%超)の医療費を支払っているのに申告していないケース
- 寄附金控除:ふるさと納税でワンストップ特例の手続きを漏らしていたケース
- 社会保険料控除:任意継続保険料や国民年金保険料の控除を見逃しているケース
- 生命保険料・地震保険料控除:証明書を紛失してそのまま未申告にしているケース
一つひとつは数万円でも、複数重なると社長クラスの所得では50万〜100万円以上の税額差になることが珍しくありません。
「もう申告してしまった」では終わらない
ここで多くの社長が諦めてしまいます。でも、その必要はありません。
税務署には「更正の請求」という制度があります。過去5年以内の申告について、税額が高すぎた場合に取り戻すことができる制度です。2026年6月時点であれば、2021年分まで遡って請求できる計算になります。
特に注意して確認してほしいのが、退職金を支給した年と役員報酬を変更した年の2つです。
退職金支給の年は、受け取った役員が退職所得申告書を会社に提出していなかった場合、本来よりはるかに高い税率で源泉徴収されてしまいます。「会社が処理してくれているはずだから」と思い込み、申告を放置しているケースがよくあります。正しく処理し直すと、税額が2分の1以下になることもめずらしくありません。
役員報酬を変更した年は、報酬の増減に伴い社会保険料も動きます。その変動後の社会保険料が確定申告に正確に反映されていないと、控除が過少になります。報酬を下げた年に社会保険料控除が増えているはずなのに申告に反映されていない、というケースがよく見受けられます。
通知書が届いたら、まずこれをやる
住民税通知書は6月上旬に届きます。受け取ったら、すぐ捨てずに以下を確認してみてください。
前年の通知書と比較する。 所得が大きく変わっていないのに税額が跳ね上がっていれば、何かの控除が漏れているサインです。自宅の引き出しや会計ソフトの記録を確認してみましょう。
確定申告書の控えと突き合わせる。 医療費の領収書、ふるさと納税の受領証明書、生命保険料の控除証明書——これらが手元にあるのに申告欄が空白になっていれば、更正の請求の対象になる可能性があります。
気になったら税理士に一言確認する。 更正の請求の書類自体はそれほど複雑ではありませんが、退職金や役員報酬が絡む案件は税務署とのやり取りが必要になるケースもあります。「この通知書、正しいですか?」と聞くだけで、思わぬ還付につながることがあります。
6月の住民税通知書を「仕方ない」と思って引き出しにしまう前に、少し立ち止まってみてください。過去5年分まで遡れる制度がある以上、今からでも遅くはありません。通知書が届いたこのタイミングが、見直しの絶好の機会です。今期の通知書と過去の申告書を並べて、一度確認してみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。