6月になると、毎年決まったように相談が増えます。「住民税の通知書が届いたんですが、こんなに払うんでしたっけ?」という問い合わせです。
先日も、年商2億円の製造業を営む社長から連絡がありました。開口一番、「去年も一昨年も、特に何もしないままでしたが、実は損していますか?」と聞かれました。通知書を一緒に確認してみると、申告できたはずの控除がいくつも漏れていて、5年分を合計すると軽く100万円を超えていました。
「もっと早く言ってほしかった」と苦笑いされていましたが、これは決して珍しいケースではありません。
住民税通知書は「節税の通信簿」
毎年6月に届く住民税の通知書は、前年の確定申告の結果が反映されたものです。多くの社長は金額を見て驚き、引き出しの奥にしまい込んでしまいます。
ところが、この通知書こそが節税漏れを発見できる最強の診断ツールです。
通知書を開いたら「所得控除の合計額」という欄を確認してください。この数字が小さければ小さいほど、課税所得が膨らんでいます。つまり、まだ節税の余地が残っているサインかもしれません。
見落としがちな3つの控除
社長が特にやり忘れやすいのが、次の3つです。
小規模企業共済の未加入
経営者専用の退職金制度で、掛金が全額所得控除になります。月最大7万円、年間84万円の控除が受けられますが、「そのうち加入しよう」と放置している経営者が驚くほど多い。税率50%の社長なら、これだけで年間42万円の節税効果があります。
iDeCoの未活用
個人型確定拠出年金は社長でも加入でき、掛金が全額所得控除になります。自営業・中小企業のオーナーは年間最大81.6万円まで拠出でき、運用益も非課税です。「年金なんてまだ先の話」と思っていると、毎年大きな控除を逃し続けることになります。
医療費控除の申告漏れ
年間10万円を超えた医療費は控除対象です。ご自身だけでなく、生計を一にする家族の医療費もまとめて申告できます。「たいした金額ではない」と感じていても、家族全員分を合算すると意外と大きな数字になることは珍しくありません。
毎年20万円の漏れが5年で100万円を超える
小規模企業共済とiDeCoを未活用のまま放置した場合、高所得の社長であれば年間20〜40万円の節税機会を逃している計算になります。
所得税と住民税の合計税率が50%を超えることも珍しくない社長にとって、これが5年積み重なると100万円超の損失です。「制度を知らなかった」「面倒でやっていなかった」だけで、これだけの差がついてしまうのです。
5年以内なら「取り戻せる」
「去年の分はもう手遅れ」と思っている方に、朗報があります。
確定申告の申告漏れは、5年以内であれば「更正の請求」という手続きで払い過ぎた税金を取り戻せます。医療費控除を申告し忘れた年分、掛金の控除を入れ忘れた年分——これらは遡って申告し直すことが可能です。
税務署に更正の請求書を提出するだけで、還付が受けられるケースもあります。まず過去5年分の申告内容を確認してみる価値は十分あります。
今年から始めれば来年の通知書が変わる
住民税通知書に記載されているのは、昨年の所得に対する税額です。今年から小規模企業共済に加入し、iDeCoを始め、医療費控除の領収書を集めれば、来年の通知書の数字は確実に変わります。
小規模企業共済の加入手続きは比較的シンプルで、商工会議所や取引のある金融機関の窓口から申し込めます。iDeCoも今年中に始めれば来年の確定申告に反映できます。今がまさに動き出すタイミングです。
通知書を眺めながら「また高いな」で終わらせるのは、もったいない。通知書を手元に、税理士に「私の控除に漏れはありませんか?」と一度だけ確認してみてください。その確認が、今後5年間で数百万円の差を生むかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。