先日、ある社長からこんな相談を受けました。
「会社から退職金が5,000万円入ってきたんですが、ひとまず銀行の普通預金に入れておけば安心ですよね?」
気持ちはよくわかります。大きなお金だからこそ、「まず安全なところに置いておこう」と思うのは自然な判断です。でも、その「安心」がじつは20年後に大きな後悔を生むかもしれない、という話を今日はしたいと思います。
普通預金に5,000万円を20年置き続けると…
今の普通預金の金利は年0.001%前後。5,000万円を20年間預け続けても、増えるのはたったの約1万円です。20年後の残高は約5,001万円。数字にすると笑えません。
しかも「増えない」だけでは済まないのが問題です。物価は毎年少しずつ上がっています。年2%のインフレが続けば、20年後に5,000万円で「買えるもの」は今の3,300万円相当まで目減りします。預金残高はほぼ変わらないのに、実質的な価値はじわじわ減っていく。これが退職金を普通預金に置き続けることの本当のリスクです。
退職金の投資先、5つの現実
同じ5,000万円を別の投資先に振り向けたらどうなるか。長期リターンの期待値をもとに並べてみます。
1位:外国株インデックス(想定年利7%複利) S&P500や全世界株式に連動するインデックスファンドが代表格です。長期では年平均7%前後のリターンが期待されており、5,000万円を20年運用すると複利の効果で約1億9,000万円。普通預金との差は約1億4,000万円にもなります。
2位:国内株インデックス(想定年利6%) TOPIX連動型などの国内株ファンド。外国株より値動きは穏やかな印象がありますが、長期リターンはやや低め。それでも20年後は約1億6,000万円前後が期待できます。
3位:不動産投資(利回り5%) 収益不動産への投資は、安定したキャッシュフローと節税効果が魅力です。ただし管理コストや空室リスク、売却しにくい流動性の低さも考慮が必要で、「ほったらかし」とはいきません。
4位:個人向け国債(変動10年) 元本保証で安心感があり、現在の利率は1%前後。リターンは小さいですが、株や不動産と組み合わせてリスク分散の「守り」として使うのが現実的な使い方です。
5位:普通預金(0.001%) 改めて数字で見ると、運用先としてはほぼゼロ成長です。「一時的な置き場所」としての機能はありますが、「増やす手段」ではないことを認識しておく必要があります。
知っている社長と知らない社長の差
この5つを並べると、1位と5位のリターン差は一目瞭然です。同じ5,000万円、同じ20年という時間を使いながら、投資先の選択一つで手元に残るお金が約1億4,000万円も変わってくる。これが「資産運用を知っている社長」と「知らない社長」の差です。
もちろん、どの投資先にもリスクはあります。外国株は短期的に30〜40%下落することもあります。不動産は空室が続けば赤字になることも。「絶対に増える」保証はどこにもありません。
だからこそ大切なのは、一つの投資先にすべてを集中させないことです。自分のリスク許容度と生活費の確保状況に合わせて、バランスよく配分することが長期運用の基本です。
まず「動かせるお金」と「守るお金」を分ける
退職後の生活設計を考えると、退職金のすべてを運用に回すのは危険です。目安として、最低でも2〜3年分の生活費は普通預金や個人向け国債などで手元に確保する。それ以外の「当面使わないお金」を外国株や不動産に振り向けるというのが、バランスの取れたアプローチです。
退職金を受け取ったら、すぐに動かすのではなく、まず「いつ・何に使うお金か」を整理する。この一手間が、20年後の大きな差につながります。
まだ退職金の使い道を「とりあえず銀行に」で済ませているなら、一度ファイナンシャルプランナーや税理士に相談して、自分に合った運用の全体像を整理しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断・投資判断は税理士・ファイナンシャルプランナーにご相談ください。