先日、ある社長からこんなLINEが届きました。「住民税の通知が来たんだけど、去年より上がってる気がする。なんか手を打てる?」
毎年6月になると、会社の役員や個人事業主の元に住民税の決定通知書が届きます。封を開けてため息をついて、そのまま引き落とし待ち——そういう方が実は多いんです。でも、この通知書が届いたタイミングは、年に一度の「節税を見直す絶好のチャンス」でもあります。
年収3,000万円規模の社長であれば、住民税だけで年間250万円を超えることも珍しくありません。それでも、設計次第で年間300万円以上の税負担を合法的に下げられる方が多いのが実情です。
所得税は最大55%、法人税は34%。この差がすべて
まず知っておいてほしいのが、個人と法人にかかる税率の差です。
高所得の社長の場合、所得税と住民税を合算した実効税率は最大55%に達することがあります。一方、法人税の実効税率はおよそ34%前後。同じ1,000万円でも、誰が受け取るかによって税金が200万円以上変わる計算です。
この差を意識して報酬の設計を組み直すのが、節税の基本的な考え方です。難しそうに聞こえますが、やることは3つに絞られます。
対策①:役員報酬の設計を一度見直す
「創業時から報酬を変えていない」「顧問税理士にお任せで深く考えたことがない」——そういう社長さんは意外と多いです。
役員報酬は、高すぎると個人の税率が跳ね上がり、低すぎると会社に利益が積み上がって法人税が増えます。この両方のバランスを取る設計が、全体の税負担を最小化するポイントです。一般的には「法人税率が適用される水準」と「個人の限界税率が上がるライン」の間に報酬を設定するのが基本になります。
ただし注意点があります。役員報酬の変更は、原則として定時株主総会(事業年度開始から3か月以内)のタイミングでしかできません。決算が近づいてから慌てても手遅れ、ということになりやすいので、年に一度このタイミングできちんと試算する習慣をつけておくのが大事です。
対策②:実務を担う家族を役員に迎える
次に検討したいのが、家族役員への所得分散です。
会社の経理や総務を実際に担っている配偶者が、無報酬または扶養の範囲内で働いているとしたら、税の観点からはもったいない状態です。実務を本当に担っているなら、適切な役員報酬を支払うことで、世帯全体の税負担を下げることができます。
たとえば社長一人に年収3,000万円が集中している状態と、社長2,000万円・配偶者1,000万円に分散した状態では、累進課税の影響で手取りが大きく変わります。配偶者の所得は低い税率帯に収まるため、全体として税率を下げる効果が生まれます。
ただし、「名前だけ役員で実態なし」という形は税務調査でも確認される部分です。実際に業務を担ってもらい、その実態を明確にしておくことが前提になります。
対策③:退職金の準備は「今から」が鉄則
最も見落とされがちで、最も効果が大きいのが退職金の設計です。
役員退職金は「在任年数×最終月報酬×功績倍率」という計算式で適正額が決まります。たとえば在任20年・月報酬100万円・功績倍率3.0の場合、最大6,000万円の退職金が適正額として認められます。この退職金は全額を損金算入できる上に、受け取る側も「退職所得控除」と1/2課税の恩恵を受けられるため、実質的な手取りが大きくなります。
在任年数が20年を超える部分については、退職所得控除が1年あたり70万円計算になります。長く経営していた社長ほど、退職金の節税効果は大きくなる仕組みです。
問題は、この退職金の原資を準備するのに時間がかかること。中小企業退職金共済(中退共)や小規模企業共済、法人保険などを組み合わせて積み立てておく必要があります。「いつ引退するか」「いくら出すか」という計画が先にあって、はじめて最適な準備ができます。
「まだ先の話」と思っているうちに在任年数だけが過ぎていく、というのがよくあるパターンです。退職金の設計だけは、早ければ早いほど有利になります。
住民税の通知書は、ただの請求書ではありません。「今の設計でいいか?」を問いかけてくる年に一度のサインです。
3つの対策——役員報酬の見直し、家族への所得分散、退職金の準備——をまだ手つかずのまま放置しているなら、今期中に一度税理士と試算してみてください。数字を出してみると、「もっと早く動けばよかった」と思う方がほとんどです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。