先日、製造業を長年経営してきた60代の社長と話す機会がありました。「引退前に退職金をいくら用意できそうですか?」と聞くと、「現金で出せるのは3千万が限界かな」とおっしゃっていました。
でも実は、その社長は最終的に6千万円を超える退職金を受け取ることができたんです。しかも合法的に、税負担を最小限に抑えながら。今日はその「2倍の退職金」を実現した仕組みをご紹介します。
15年前の提案が、引退を豊かにした
山田社長(仮名)の会社は毎年安定した利益を上げていました。ただ「稼いでも税金で消えていく」という感覚は、好業績な会社ほど強くなりますよね。
転機になったのは、45歳のとき。顧問税理士から「法人保険に加入しながら、退職金の財源を積み立てていきましょう」という提案を受けたことでした。最初は半信半疑だったそうですが、仕組みを聞くうちにその合理性に納得したといいます。
年間300万円の保険料を払い続けること15年。解約返戻率85%で、約3,800万円の解約返戻金を手にしました。
「損金算入」と「解約返戻金」が2つの柱
法人保険を退職金戦略に使うメリットは、大きく2つあります。
ひとつは保険料を損金に落とせること。会社が払う保険料の一部を経費として計上できるため、その分だけ毎年の法人税が下がります。年300万円の保険料なら、積み重なる節税効果は決して小さくありません。
もうひとつは解約返戻金として資金が戻ってくること。保険を解約すると、積み立てた保険料の一定割合が返ってきます。山田社長の場合、15年分の積み立てが3,800万円超となって戻ってきました。これを退職金の財源として活用したわけです。
退職所得控除が、さらに強力に働く
退職金には、給与とは全く異なる有利な税制が用意されています。「退職所得控除」と呼ばれる仕組みで、勤続年数が長いほど大きな控除を受けられます。
勤続20年超の場合、控除額は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」という計算式になります。さらに、控除後の残額に2分の1をかけた金額にしか課税されない。つまり同じ金額でも、給与として受け取るより圧倒的に税負担が軽くなるんです。
山田社長はこの退職所得控除を最大限に活用することで、手取りを大きく増やすことに成功しました。現金3千万円の退職金と比べると、その差は歴然です。
「保険なし」で進んでいたら、どうなっていたか
仮に法人保険を使わず、毎年の利益を積み立てるだけだったとしたら。法人税率を30〜35%とすると、税引き後で3千万円を貯めるには、4,500万円以上の税引き前利益が必要になります。
一方、保険料を損金に落としながら積み立てるルートを通れば、同じ会社の利益を使っても手元に残る金額が変わってくる。「どの経路を通るか」で、最終的な受取額がこれほど変わるのが、出口戦略の面白いところです。
注意点:2019年以降でルールが変わっている
ここで一つ、大切なことをお伝えしておきます。
法人保険の損金算入ルールは、2019年に国税庁の通達改正によって変わっています。解約返戻率が高い保険ほど損金算入できる割合が制限されるなど、以前と同じ設計では思ったほどの効果が出ないケースがあります。
「社長仲間がうまくいったから」という理由だけで飛びつくのは危険です。会社の利益水準・社長の年齢・加入する保険の種類によって、最適な設計はまったく異なります。
引退を10年後に控えているなら、今が動きどき
法人保険で退職金の財源を作るうえで、時間は最大の武器です。山田社長が6千万円超を実現できたのも、45歳という早いタイミングで動き出したからこそ。
60歳手前で相談に来ても、積立期間が短すぎて効果が限られてしまいます。「まだ先の話」と感じている社長こそ、今期中に顧問税理士へ「引退後の出口戦略」という視点で相談してみてください。その一言が、10年後の手取りを大きく変えることになりますから。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。