「保険で退職金を積み立てているけど、どのタイミングで解約すればいいんだろう」

そんな相談を、決算期になるとよく受けます。法人保険を使った退職金積み立ては、正しく設計すれば非常に強力な節税手法です。ところが、出口の設計を最初からきちんと考えていなかったために、数百万円単位で損をしてしまうケースが後を絶ちません。

今回は、失敗しない保険退職金の出口逆算設計を、重要度の高い順にランキング形式でお伝えします。


3位:「いくら必要か」から逆算して入る

まず前提として確認しておきたいのですが、あなたは退職金の目標額を決めてから保険に入りましたか?

「とりあえず保険料を損金算入したい」という動機だけで加入してしまうと、気づけば解約のタイミングを逃したり、思ったより原資が貯まっていなかったりといった事態になります。目標なき積み立ては、実質的に掛け捨てと変わりません。

理想的な順番はこうです。まず「65歳退任時に退職金3,000万円を受け取る」という数字を決める。そこから逆算して、保険の種類・保険料・加入期間を設計する。この順序を守るだけで、保険選びの基準が一気に明確になります。

目標額の目安としては、役員報酬×勤続年数×功績倍率(最大3倍)という計算式が税務上の適正水準として使われます。この範囲内に収めておくことが、後の税務調査対策にもつながります。


2位:返戻率のピークを退任年に合わせる

法人保険の解約返戻率は、加入から何年経過したかによって大きく変わります。一般的には加入から一定年数が経過した時点でピークを迎え、その後は徐々に下がっていきます。

ここで問題になるのが、ピーク時に解約できないケースです。たとえば返戻率95%前後で解約できれば、積み立てた保険料の大部分が戻ってきます。ところがそのタイミングと退任時期がずれると、返戻率が85%台まで落ちた状態で解約せざるを得なくなり、差額が数百万円になることもあります。

保険に加入する段階で「自分は何歳に退任するつもりか」をある程度決めておき、その時期に返戻率がピークを迎える設計を選ぶ。これが実は非常に重要なポイントです。

5年・10年単位でのライフプランを経営者自身が持っていないと、保険の設計そのものがブレてしまいます。加入前に保険設計士や税理士と一緒に確認しておくことを強くおすすめします。


1位:解約益と退職金支給を同じ事業年度に計上する「一体設計」

これが最も重要なポイントです。法人保険を解約したときに受け取る解約返戻金は、法人の益金(収益)として計上されます。つまり何も対策しなければ、その分だけ法人税が増えてしまうわけです。

ここで退職金が登場します。役員に退職金を支給すると、その金額は損金(経費)として計上できます。解約返戻金という「益金」と、退職金という「損金」を同じ事業年度にぶつける。この一体設計によって、法人税の負担を大幅に圧縮できるのです。

具体例で考えてみましょう。解約返戻金が3,000万円だった場合、そのまま受け取ると法人税率30%として約900万円の税負担が生じます。ところが同じ期に適正額の退職金3,000万円を支給すれば、益金と損金がほぼ相殺され、法人税の増加をほぼゼロに抑えることができます。

ただし、退職金の支給には事前の準備が欠かせません。取締役会議事録などの書類整備、退職金規程の整備、そして退職の実態(実際に経営から退く)が必要です。解約の直前に慌てて準備しても、税務上のリスクが高まります。保険加入時点から、この「出口の一体設計」を前提に動いておくことが肝心です。


保険で退職金原資を積み立てることは、節税と資産形成を同時に実現できる優れた手法です。ただしその効果を最大化するには、入口だけでなく出口の設計が決定的に重要になります。

「いくら必要か」を決め、「ピーク時期を退任年に合わせ」、「解約益と退職金を同じ期に計上する」。この3つを最初から組み込んだ設計ができているかどうか、一度確認してみてください。まだ加入前であれば、今が設計を見直す最大のチャンスです。顧問税理士と一緒に出口から逆算した保険設計を、ぜひ検討してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。