先日、年商3億円の建設業を営む社長からこんな連絡がきました。「三原さん、住民税の通知書って毎年届くんですけど、金額だけ見てすぐ捨ててました。中身をちゃんと読んだことがなかったです」と。
実はこの社長、その年の節税ポイントを軒並み見逃していたんです。通知書をよく読んだら、課税所得が想定より600万円も高かった。手を打てていれば、年間で200万円近く節税できていた計算になります。
住民税通知書は「節税の答え合わせ」だった
6月になると、法人オーナーの手元には個人で納付する住民税の通知書が届きます。多くの社長が金額だけチラッと確認して、封筒ごと書類の山に埋めてしまう。でも、この一枚の紙には、今年の節税がうまくいったかどうかの答えが書いてあります。
注目すべきは「課税所得」の欄です。住民税は課税所得に対して10%かかりますが、所得税と合算した実効税率で考えると、課税所得600万円を超えてくると税率33%以上になります。
つまり、課税所得が300万円下がれば、それだけで100万円近い節税になる計算です。この数字を毎年確認する習慣を持っている社長は、意外と少ない。だからこそ、やるだけで差がつきます。
法人オーナーが課税所得を下げる3つの手法
課税所得を下げるためのアプローチは大きく3つあります。いずれも「知っているかどうか」で数百万円の差が出る手法です。
① 役員報酬の最適化
役員報酬は、高すぎても低すぎてもいけません。高すぎると個人の所得税・住民税が増え、低すぎると会社の法人税が増える。この「最適解」を毎年の業績に合わせて設計するのが基本です。
たとえば、年収2,000万円の役員報酬を1,700万円に見直すだけで、所得税・住民税の合計が年間100万円以上変わるケースも珍しくありません。決算後3か月以内にしか変更できないため、通知書が届いた6月に気づいておくことが翌年の設計につながります。
② 小規模企業共済・倒産防止共済の活用
小規模企業共済は、個人の課税所得から全額控除できる「経営者のための退職金制度」です。月7万円(年間84万円)が上限で、これだけで課税所得を84万円下げられます。
中小企業倒産防止共済(セーフティネット共済)は月20万円(年間240万円)まで損金算入でき、法人の利益圧縮に使えます。この2つをセットで活用している経営者は、そうでない経営者と比べて実効税負担が大きく変わります。
③ 社宅の活用
自宅を会社名義で借り上げ、役員が一定の家賃を会社に支払う形にすることで、家賃の大半を会社の経費にできます。月30万円のマンションを社宅にすると、条件次第で月20万円以上を会社負担にできることもあります。
年間240万円が個人の財布から会社の経費へ移るわけですから、課税所得への影響は相当なものです。
去年と今年の通知書を並べてみる
これらの対策を実行した翌年、住民税通知書の課税所得の欄を確認すると数字が下がっているはずです。逆に変わっていない、あるいは上がっているなら見直しのサインです。
税率の目安として頭に入れておくと便利です。
- 課税所得300万円以下:所得税+住民税の合計税率20%台
- 課税所得600万円前後:合計税率33%前後
- 課税所得1,000万円以上:合計税率43%以上
自分の課税所得がどの水準にあるかを把握することが、節税設計の出発点になります。
通知書が届いた今が、動けるタイミング
役員報酬の変更は決算後3か月以内、共済の加入はいつでも可能、社宅の設計は契約のタイミング次第。手を打てる時期に制限があるからこそ、6月に気づいて動けるかどうかが翌年の税負担を決めます。
通知書が届いたら、金額の前にまず「課税所得」の欄を確認してみてください。もし昨年より下がっていれば、対策が効いている証拠です。変わっていなければ、今年こそ税理士と設計を見直すタイミングです。
毎年6月にたった1分だけ、この数字と向き合う習慣が、長い目で見て大きな差を生みます。今年の通知書、まだ捨てていないうちに確認しておきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。