毎年6月、社長のもとに1枚の通知書が届きます。「住民税決定通知書」——多くの社長がチラッと見て引き出しにしまい込む、あの書類です。
でも実は、この通知書には昨年1年間の節税の「採点結果」が詰まっています。
先日、年商8億円の建設業の社長からこんな相談を受けました。「去年より住民税が増えたんだけど、何かできることある?」と。通知書を見ると、課税所得が約2,500万円。役員報酬は月150万円のまま何年も変えていないとのことでした。
試算してみると、報酬の組み合わせを見直すだけで、年間300万円以上の節税余地が残っていたんです。
住民税の通知書が「採点結果」である理由
住民税決定通知書に記載されている「課税総所得金額」、そこを見てください。この数字が高ければ高いほど、昨年の節税設計に改善余地がある、というサインです。
特に経営者が見落としがちなのが、個人税率と法人税率の差です。
個人の所得税は最高45%、住民税10%で合計最大55%。一方、中小企業の法人実効税率は約34%です。この差、実に20%以上あります。
たとえば課税所得が3,000万円あったとして、そのうち1,000万円を「個人で受け取るのをやめて法人に残す」設計にするだけで、単純計算で200万円前後の税負担差が生まれます。この差が、毎年6月の通知書に全部出てきているわけです。
役員報酬の最適化で何が変わるのか
役員報酬の設計は、「もらいすぎず、もらわなすぎず」のバランスが鍵です。
報酬が高すぎると個人の所得税・住民税が跳ね上がります。低すぎると法人に利益が残り、法人税がかかります。この二つの税率が交差するポイント——そこに「最適役員報酬額」があります。
課税所得が900万円を超えると所得税率は33%、1,800万円超で40%、4,000万円超で45%です。ここに住民税10%を足すと、実質的な税率が法人実効税率の34%をはるかに超えてきます。
自分の課税所得がいくらかを通知書で確認して、このゾーンに照らして報酬額を見直す——これが基本の考え方です。年収1,200万円の社長と年収800万円の社長では、最適な設定がまったく違います。
見落とされがちな「社会保険料」との兼ね合い
もうひとつ、役員報酬を動かすときに忘れてはいけないのが社会保険料です。
報酬が増えると健康保険・厚生年金の保険料も上がります。税金だけで最適化してしまうと、社会保険料が増えて手取りが逆に減る、というケースがあります。
月額報酬を100万円から120万円に上げたとき、増える税・保険料の合計が増える手取りを上回ることも珍しくありません。「税率ゾーン・社会保険料・退職金設計」の3点をセットで考えることが、本当の意味での節税設計です。
「来月動けばよい」は通用しない
ここが最も重要なポイントです。
役員報酬は、原則として期首から3か月以内に決定しないと損金算入できません。
3月決算の会社なら4〜6月中がタイムリミット。このウィンドウを逃すと、1年間は報酬を変えられません(定期同額給与のルール)。
「住民税通知書を見て焦った」というタイミングが毎年6月なのに、その気づきを「来期の検討課題」にして引き出しにしまうと、翌年6月にまた同じ通知書を見て後悔する悪循環に入ります。今期中に動ける会社と動けない会社の差は、だいたい「いま検討を始めたかどうか」です。
今すぐ通知書を取り出してみる
今月届いた住民税決定通知書を引き出しから出してみてください。「課税総所得金額」の欄を見て、2,000万円を超えていれば、役員報酬の設計を一度専門家に見直してもらう価値があります。
通知書1枚で300万円の節税余地を発見したという社長は、決して珍しいケースではありません。税金は「かかってから減らす」より「設計段階で制御する」ほうが、圧倒的に効果的です。
今年の変更タイミングが間に合いそうなら、今すぐ顧問税理士に相談を。間に合わないなら、来期の設計を今から議論し始めることをおすすめします。毎年6月、通知書が来るたびに後悔するのではなく、「今年は上手くやれた」と思える6月を目指してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。