先日、年商3億円の建設業の社長から、こんな相談を受けました。\n\n「うちの決算、ここ数年ずっと黒字なんですけど、なんか税金ばかり払っている気がして…」\n\n話を聞いてみると、役員報酬は10年前に設定したまま。法人にどんどん利益が積み上がっているのに、自分の給料は据え置き。「会社にお金を残すのが経営者の務め」と信じて疑わなかった、と言うのです。\n\nこれ、実は非常に”もったいない”状態です。\n\n## 「会社にお金を残す」が裏目に出るとき\n\n法人に利益を残すと、法人税がかかります。中小企業の実効税率はおよそ34%。1000万円の利益に対して、約340万円が税金として消えていきます。\n\nでは、社長個人がたくさん受け取ればいいかというと、今度は個人に所得税と住民税がのしかかります。所得が高くなれば最高税率は合計55%。1000万円の役員報酬に対して、半分以上が税金になるケースもあります。\n\n「法人に残しても34%、個人に取っても55%。どっちも税率が高い」という状態になっているとしたら、それが役員報酬の設定ミスのサインです。\n\n## 「所得分散」という考え方\n\n解決策はシンプルで、法人と個人に所得を最適に分散させること。専門的には「所得分散」と呼ばれる手法です。\n\n具体的には、役員報酬を適切な水準に見直すことで、法人の課税所得を圧縮しながら、個人の税率も高い帯域に入らないよう調整します。\n\nうまくいくと、実効税率が55%から20%台まで下がるケースがあります。年間の利益規模によっては、この差額が2000万円を超えることも珍しくありません。10年単位で計算すると、ぞっとするような数字になります。\n\n## 「役員報酬は自由に変えられる」は誤解\n\nここで一つ、重要な注意点があります。\n\n役員報酬には、原則として期首から3ヶ月以内にしか変更できないというルールがあります。これは税法上の「定期同額給与」の要件で、期中に報酬を増減させると、その変更分が損金(経費)として認められなくなるからです。\n\n「来月から増やせばいい」は通用しません。今期の決算月が近いなら、すでに今期の変更タイミングは過ぎている可能性が高い。\n\n決算が終わってから「見直せばよかった」と気づいても、また1年待つことになります。1年間、2000万円の差額が出続けるとしたら、その損失は取り返せません。\n\n## 「なんとなく」が一番高くつく\n\n中小企業の社長の役員報酬の決め方を聞くと、「創業時から変えていない」「顧問税理士に言われた金額にした」「社員に合わせて設定した」というケースが非常に多い。\n\nいずれも悪意はないのですが、税務的な最適化の視点が入っていないと、毎年じわじわと税負担が積み上がっていきます。\n\nチェックしたいのは、この2点です。\n\n- 法人の利益(課税所得)が毎年1000万円を超えているか\n- 役員報酬が直近3〜5年で見直されていないか\n\nどちらも「はい」なら、一度専門家に試算してもらう価値があります。\n\n## 今期の決算月を確認してください\n\n役員報酬の見直しは「思い立ったらいつでも」ではありません。期首から3ヶ月以内という制約があるため、動けるのは決算が明けた直後だけです。\n\n今期の決算月が近い社長は、来期の役員報酬設計を今から考えておく必要があります。逆に、決算が終わって間もない社長は、今がまさにチャンスです。\n\n「うちは大丈夫」と思っている社長ほど、実は数年単位で大きな税金を払い続けているケースがあります。役員報酬の水準を専門家に一度シミュレーションしてもらうだけで、驚くような数字が出てくることがあります。\n\n今期の決算月と、現在の役員報酬の設定を、今日改めて確認してみてください。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。
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